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昨年の補強が、遂に本物の戦力へ。
ACL広州戦に引分けた浦和の進化。
posted2016/03/17 11:35
text by
轡田哲朗Tetsuro Kutsuwada
photograph by
Getty Images
執念の同点劇で、浦和レッズは貴重な勝ち点1をもぎ取った。16日のACLグループステージ第3節は、広州恒大(中国)とのアウェーゲームだった。浦和は前半6分と14分に立て続けに失点したが、その後に反撃。前半30分にMF武藤雄樹、後半終了間際の44分にFW興梠慎三がゴールを決め、2-2の引き分けに持ち込んだ。
広州は、サッカー界の流行語にもなりつつある“爆買い”の先駆者的な存在だ。ここ数年、ヨーロッパのトップレベルで活躍する選手や監督を豊富な資金力で招き入れてきた。
今季の開幕前にも、スペインのアトレティコ・マドリーからコロンビア代表FWジャクソン・マルティネスを獲得している。浦和のミハイロ・ペトロヴィッチ監督は試合前日に「今年獲得したマルティネス選手にかかった費用は、我々のクラブの年間予算と同じくらいではないでしょうか」と話している。
広州は昨季の同大会を制した現アジアチャンピオンだ。しかし、浦和も2007年にアジア王者に輝いた元チャンピオンである。まずは、当時の浦和を思い返してみたい。
2007年の浦和と今の広州、ともに攻撃の主役は外国人。
田中マルクス闘莉王を中心とした強固な3バックをベースにしたチームで、前線と後方をリンクするのは、ボランチの鈴木啓太や長谷部誠といったチームプレーに忠実な“働き者”たち。そして相手ゴールを陥れる担当者は、2人のブラジル人アタッカーだった。
元ブラジル代表FWワシントンと、レバークーゼンなどでプレーしたMFロブソン・ポンテが、前線で大きな違いを作り出していた。誤解を恐れず乱暴にまとめてしまえば、代表レベルの日本人選手たちがハードワークし、強力な外国人選手がスコアを動かすというチームだったのだ。
田中達也(現アルビレックス新潟)や永井雄一郎(現ザスパクサツ群馬)ももちろん質の高いFWだったが、前述のブラジルコンビなしにアジア制覇を成し遂げられたかといえば、大いに疑問が残るだろう。それだけ、ワシントンとポンテは決定的な存在だった。
この構造は、今の広州と非常に似てはいないだろうか。最終ラインから中盤までは中国代表に名を連ねる選手たちがズラリと並ぶが、攻撃の主役はあくまでも強力外国人だ。今回の浦和戦で2得点したのも、ブラジル代表招集歴を持つFWリカルド・グラルだった。