スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
スペインで吹き荒れるコスタ不要論。
メディアがあげつらう彼の「乱行」。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byAFLO
posted2016/03/18 10:40
ピッチ上で数々の「暴挙」の歴史があるジエゴ・コスタ。スアレスは大分改心したように見えるのだが……。
スペイン代表でのコスタは一向に輝いていない。
3月末のテストマッチ2試合に向けたスペイン代表メンバーの選考を前に、コスタの落選を訴える格好の材料ができたからだ。
母国ブラジルとの争奪戦を制し、晴れてコスタをラ・ロハの一員として迎え入れたのは2013年11月。それから2年以上が経過した現在まで、ビセンテ・デルボスケ監督は所属クラブで不調であっても、ケガ明けでコンディションが悪くても、一貫してコスタをFW陣の要に据えてきた。
しかし、これまで10試合に出場してルクセンブルク戦の1ゴールのみという結果が示す通り、いまだにラ・ロハにおけるコスタはそのポテンシャルを発揮できずにいる。
プレースタイルが合っていないのは始めから分かっていたことだ。アトレティコ・マドリーしかり、チェルシーしかり、コスタのパワーと機動力が生きるのはスペースを享受しやすいカウンタースタイルのチームであり、ほぼ常に相手チームの分厚い守備ブロックを攻略しなければならないスペインでは彼の良さが生かしづらい。
それでも例えば、リードを保って後半なかばを迎えれば相手チームも前に出ざるを得なくなり、カウンターでディフェンスラインの裏をつくチャンスは増える。そのような状況で試合を仕留める切り札的存在としてであれば、彼の個は十分に活用できると思うのだが、これまでコスタは多くの場合スターターとしてスペースがない窮屈な状態でのプレーを強いられることが多かった。
ライバルが好調でも、コスタが不調でも使われ続けた。
始めのうちは限られたテストマッチの機会でなるべく長い時間プレーさせ、早くチームに馴染ませる意図があるのだと理解していた。だが適応どころかケガ明けでコンディションも整っていなかったワールドカップ本大会でも先発起用したのは驚きだったし、その後も着実に結果を出しているパコ・アルカセルやアルバロ・モラタと同等、いやそれ以上に、一向に自身の生かし方を見いだせないコスタが使われ続けてきたことには首を捻らざるを得ない。