スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
スペインで吹き荒れるコスタ不要論。
メディアがあげつらう彼の「乱行」。
posted2016/03/18 10:40
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph by
AFLO
「コスタがやらかした:レフェリーに唾吐き、相手選手に噛みつく」
スペインのニュースサイトを開いたとたん、そんな見出しが目に飛び込んできたのは、3月12日の夜のことだ。
ああ、またやらかしたか。そう思いながら見出しをクリックし、出てきた動画を再生してみると、なるほど鼻息を荒げたジエゴ・コスタがイエローカードを提示したレフェリーを睨みつけ、その足元に勢いよく唾を吐き捨てている。
続くシーンではファウルを食らったコスタが勢いよく立ち上がり、チンピラ顔負けのメンチを切りながらギャレス・バリーの顔に自身の額を押し付ける。
そして相手の首元に顔をうずめ、ヴァンパイアのように牙を剥き出し首筋に走る大動脈をがぶりっ!
……というわけではなかった。
確かにコスタは噛みつくような口の動きを見せたものの、恐らく噛んでいない。噛まれたのであれば何らかの反応を見せていたはずのバリーに、何のリアクションも見られなかったからだ。
騒ぐほどの事件ではなかったが、メディアは大騒ぎ。
噛まなかったのか、噛めなかったのか。それは本人のみぞ知るところだが、いずれにせよすぐにコスタは我に返り、これはまずいと思ったか全身密着していたバリーの頭と背中に手を回し、抱擁する形でその場をごまかそうとしていた。
要は未遂止まりだったわけだ。
結局コスタはこの行為によってこの日2枚目の警告を受け、プレミア移籍後初となる退場処分を受けたわけだが、彼でなくとも気持ちを切らせてしまいやすい試合状況――トーナメントのFAカップ準々決勝にて、0-2と敗戦濃厚だった終了間際の84分――だったことも含め、そこまで大袈裟に騒ぐほどの事件ではなかった気がする。
しかし、スペインのメディアには騒ぐべき理由があった。