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日本新を出さないと五輪に行けず!?
代表選考が暗過ぎる男子マラソン。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byYohei Osada/AFLO SPORT
posted2016/03/09 10:30
ゴール直前では、脇腹を抑えながらもひとりアフリカ人選手を抜き去った北島寿典。
実は、各大会で十分に健闘した男子選手はいた!
選手本位で見れば、どの大会にも健闘した選手がいた。
昨年12月の福岡国際で自己記録を1分近く縮める初の2時間8分台を出した日本勢1位の佐々木悟はもちろん、東京マラソンで日本勢1位の高宮祐樹の場合は、実に5分近くも自己記録を短縮しての2時間10分57秒だ。これらも派遣設定記録と比べればかなり劣るから、低い評価がくだされる。レベル云々という話になる。
だが、大会すべてを見渡してみると、突き当たる疑問がある。
派遣設定記録の基準が正しいのかということだ。
派遣設定タイムは、男女ともに、オリンピックで上位を争えるレベルという観点から、近年の大会のデータをもとに割り出されている。世界の上位から見れば、設定されている記録は正しいかもしれない。
しかし、国内の事情からすればどうか。
派遣設定記録より早いのは、14年前の高岡のみ!?
女子は2時間22分30秒が設定されていた。
過去、これより速いタイムで走った選手は6名いた。そこに大阪国際女子マラソンで福士加代子が加わり7名となった。昨シーズンは前田彩里があと一歩に迫るタイムを出してもいるし、現実の目標として捉えやすいレベルだろう。
一方の男子は、派遣設定記録以上で走ったのは、これまで、2時間6分16秒の高岡寿成ただ1人に過ぎない。2002年の記録である。女子とは様相が異なる。
国内事情からすればあまりにもハイレベルな記録を、どこまで現実として捉えられるか……。少なくない有力選手が参加した東京マラソンでは、日本勢の駆け引きが激しいあまり、ペースが上がらなかった。そこに見えたのは、記録よりも順位へのこだわりだ。設定記録を突破してやろうではなく、日本勢トップを狙っていた。設定記録を現実として見つめていなかったからではないか。