ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
方向は違えどAONは3人とも全力疾走。
ツアー会長、現役、課外活動の三様。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byKyodo News
posted2016/02/25 18:10
2015年の全英オープンで、松山英樹に助言を送る青木功。メジャー大会2位はいまだ破られない日本人最高成績だ。
周囲の人を惹き付ける、ジャンボの瞳。
新シーズンを迎えるにあたり、尾崎は新興のシャフトメーカーと契約を結んだ。昨年の終わりにかけて、プライベートのラウンドで試してきたブランドだった。
オフの期間中はまず体作りを優先し、ボールを打ち始めるのは二の次。それゆえ、千葉県内にある自身の練習施設では、弟子のツアープロたちをテスターにして彼らが打つ弾道に目を凝らすという。
小山内護、河井博大といった選手に、まず同じスペックのクラブで打たせてみる。鋭く飛び出たボールが、いったんフワッと浮き上がってから落ちるような軌道、いわゆる“めくれ上がる”打球になることが、尾崎を納得させる大きな条件のひとつ。小山内のボールはストレートに、パワーで劣る河井の軌道は、ややフェード気味に落ちてもいい。「これならば(尾崎自身が打っても)左に行かない」というモデルを見極める。
「ジャンボさんは普段はジャージ姿が多いんですが、ゴルフウェアになると引き締まった印象になるんです。オフには加圧トレーニングで体を鍛えて……」というのは、メーカー担当者。
「お話をしていると、飛距離を出すためにはまず自分自身の体力が必要、体力があってこその道具だと言われる。こちらの意見も真剣に聞きながら、目を見て話して下さる。それを聞いていると、自ずと『ならば道具をなんとかしてあげたい』と思うんです」
まだ終われない、終わりたくない。そう必死に訴えかけるような瞳が、周囲のサポートを自然と惹き付けている。
中嶋常幸「いまはゴルフは“2番目”くらいかな」
青木とも、尾崎ともまた違う視線で自身の現状を見るのが、同じ時代を歩んだもうひとりのレジェンド、中嶋常幸である。「昔はゴルフがなによりも大事だった。ゴルフのためなら家庭だろうがなんだろうが顧みないこともあったけれど、いまはそうじゃない。いまは、ゴルフは“2番目”くらいかな……」
とはいえAONで最も若く、レギュラーツアーとシニアツアーを高いレベルで掛け持ちし、「レギュラーでも予選を通るだけじゃ寂しいじゃない。上に行ってこそ、だよ」と言うプライドはいまも色あせていない。