野球クロスロードBACK NUMBER
山田哲人“3年計画”最終年の野心。
広島・菊池越えでゴールデングラブを。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNanae Suzuki
posted2016/02/03 10:30
2015年は守備率、エラーの少なさでは広島の菊池を上回っているが、菊池には圧倒的な守備範囲があるため、GG賞獲得には今以上の精度が求められる。
徹底した打撃練習と同時に、走塁技術の鍛錬も。
まだレギュラーに定着していなかった2013年。「何かを変えないといけない」と、当時ファームの打撃コーチだった杉村繁に師事し、打撃を徹底的に磨いた。'14年のシーズンに突入すると試合前に11種類にも及ぶティー打撃を毎日のようにこなしていった。その努力はレギュラー定着、そして、右打者では歴代最多となる193安打となって結実した。山田が述懐する。
「杉村さんと毎日にように話し合って、『とりあえず3年は続けよう』となって。やっぱり息の長い選手になりたいですし、あの時はもう覚悟を決めましたね」
その覚悟は翌年も続いた。しかも、連日のティー打撃に走塁技術の鍛錬も加わったのだ。
きっかけは、走塁コーチを務める三木肇と福地寿樹の言葉だった。
「走塁が試合を決めることだってある」
この年トリプルスリー達成を明言していた山田にとって、前年15だった盗塁の倍増は至上命題でもあった。
「僕は、やると決めたら絶対にやるタイプなんで」
投手のタイプやカウントといった状況からリードの歩幅、牽制での帰塁のタイミング、ベースランニングの走路、ベースを踏む角度や位置、スライディングの形は、それぞれにハイレベルな技術を求められたという。
練習について山田は、「ティーとフリーバッティングやった後に2、3分だけなんで、そんなに苦労はなかったですよ」と事も無げに振り返るが、試合前には相手投手の特徴や配球といったデータを頭に入れる作業も行っていた。体と頭をフル回転させながら143試合戦い抜くわけだから、その疲労度は計り知れない。
ある時、山田はふと表情を崩して自らの心情をこう述べていたものである。
「杉村さんと三木さんもそうですけど、コーチの方たちはうまいんですよ、話術が(笑)。興味をすごく持たせてくれるんで、『これをやったら結果がついてくるんだ』と思っちゃうんですよね。1年間やるとなるとしんどいんですけど、僕はまあ、やると決めたら絶対にやるタイプなんで」