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今年のMotoGPはバトルが更に面白く!
タイヤとECUの共通化で何が起こる?
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2016/02/01 10:40
電子制御の塊と化した現代のMotoGPマシン。敢えての技術的逆行はレースにどんな影響を及ばすだろうか。
コースに合わせて車体に手を入れる発想。
とりあえず今年は、どのメーカーも共通ソフトウエアのパフォーマンスをいかに発揮させるかという作業に追われるはず。シーズン中にはメーカー間の話し合いでアップデートもできる方針だ。さらに言えば、今年のルール変更は、その恩恵をすべてのチームとライダーが受けられるというのが、これまでと決定的に違う点である。
昨年は、ドゥカティとヤマハがカウルにウイングをつけるなど、エアロダイナミクスに力を注いだ。その効果については、やらないよりはやった方がいい、という程度のものらしい。しかし、ワークスチームにとっては、電子制御に力を注げなくなった分、こういったところでコツコツとパフォーマンスを上げていくしかないようだ。
この数年、ワークスチームから聞こえてくる声は、「エンジンのシーズン中の開発が禁止されたので、やれることは車体だけ。となれば、コースに合わせてシャーシー、スイングアーム、マフラー、外装などを変えていく。つまり、エンジン以外はすべてセッティングパーツの時代になった」というもので、この部分でワークスとプライベートチームの差がついていくのかも知れない。
現在のMotoGPは、F1よりはるかに面白い。
もうひとつ大きな変更点は、タイヤがブリヂストンからミシュランに変わることだ。
昨年までは、独自のソフトウエアを使うワークスマシンと共通ソフトウエアで戦うチームは、使えるタイヤが異なっていた。ワークスチームより1ランクソフトのタイヤが使えるというハンディキャップを与えることで、クラス全体のタイム差をなくそうという狙いは、ある程度成功した。だが、予選と決勝で大きくポジションが入れ替わり、本当の速さがわからないという欠点も生まれていた。それが今年は5年ぶりに一本化されることになった。
グランプリを運営統括するドルナは、参加台数の安定化を図るためにコスト削減を打ち出し、さらにワークスチームとプライベートチームの差をなくそうと、さまざまなハンディキャップルールを生み出してきた。こうして次々に打ち出されてきたグランプリ史上初の試みは参加台数の安定化につながったが、スポーツ性よりも興行優先を強く感じさせるものだった。
とは言え、次々に新しいルールができて複雑になるばかりで見ていて何が起きているのかわからないだけでなく、コース上のバトルがなくなり面白くないという批判にさらされているF1に比べれば、MotoGPは遥かに面白い。
共通ソフトウエアの実施とミシュランタイヤへのスイッチで、今年のMotoGPは当分、波乱のレースが続くことが予想される。去年までに比べれば遙かにルールは簡素化されたが、こうしたルール変更がどんな効果をもたらすのか。2月1日から始まる今年最初の公式テストの結果が待ち遠しい気分である。