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今年のMotoGPはバトルが更に面白く!
タイヤとECUの共通化で何が起こる?
posted2016/02/01 10:40
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph by
Satoshi Endo
12月1日に始まったMotoGPのテスト禁止期間が、1月31日で終了する。
それを受けて、2月1日から3日までの3日間、マレーシアのセパンで今季初テストが行なわれる。これを書いているのは、1月下旬のこと。Webサイトにアップされるのはテスト期間中となるが、今年のMotoGPクラスの見所を書いておこうと思う。
昨年から今年にかけて、MotoGPクラスの大きなルール変更はふたつ。すでに2年前にエンジン・コントロール・ユニット(ECU)のハードウエアが共通化されているが、今年からソフトウエアも全車共通となる。2002年に2ストロークから4ストロークにエンジンが変更されたが、それ以来もっとも進化しているのがECUだった。
ライダーが操縦に集中できる制御。
車速、エンジンの回転数、アクセル開度、バンク角といった走行データを瞬時に計算して、トラクションコントロール、燃費計算などをこなしていく。
2ストローク時代は、ありあまるパワーをライダーがいかにコントロールしていくか。アクセルワークというライダーのセンスが問われる時代だった。それが4ストロークになってからは、ECUがライダーの好みに合わせてコントロールし、ライダーはライディングに集中するという時代になっていた。
まさに、マシンの頭脳と呼ばれる部分に莫大な開発費が注がれることになる。それがワークスマシンとサテライトチームやプライベートチームとの差になり、その不公平を是正するために、ECUのハードウエアとソフトウエアの共通化を図ることになった。
もちろん、メーカーはこのルール変更に猛烈に反対した。電子制御を進化させることがパフォーマンスを大きく左右していたし、もっとも“やりがい”のある部分だったからだ。簡単にいえば1000ccでとりあえず馬力を出し、その馬力を電子制御でコントロールしていく、ということだ。
共通ソフトウエアの採用で、電気担当の技術者にとってはつまらない時代になったが、エンジンを開発するという点では、ECUに頼らない味付けが求められることになる。そのためにも2ストロークの時代のように、基本設計が重要になってくることは間違いない。