ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
リオ五輪の新設ゴルフコースに潜入。
勝負を左右する“風”と周辺環境。
posted2016/01/31 10:50
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
AP/AFLO
錚々たる名前を耳にするだけでも、その時が差し迫っていることが実感できる。
昨年12月某日。日本スポーツ界のVIPを乗せた航空機は、五輪開催を8カ月後に控えたブラジル・リオデジャネイロに向かっていた。
スポーツ庁の初代長官、というよりはやはり1988年ソウル五輪金メダリストとして水泳界の歴史に名を刻んだ鈴木大地氏。参議院議員、というよりはやはり冬夏の両五輪に出場した橋本聖子氏。柔道の山下泰裕氏、ウエイトリフティングの三宅義行氏、レスリングの高田裕司氏……。
それぞれが各種目の歴史を作ってきた面々は、日本オリンピック委員会(JOC)と各競技団体が実施した「合同現地調査」に参加したメンバーである。
立ち向かうべき最初の敵・ゴルフコース。
2016年夏、112年ぶりに正式種目に復帰するゴルフからは、オリンピック・ ゴルフ競技対策本部の日本ゴルフ協会(JGA)・山中博史専務理事と協会スタッフひとりが同行した。
かつて青木功のキャディとして転戦し、メジャー等の国際大会でレフェリーを務めた山中氏が南米を訪れたのは15年ぶり。2000年にアルゼンチンで行われたW杯以来だった。
日本からリオまでは、ドバイなど中東を経由すると時間も短縮できるらしいが、そこには大人の事情もある。国内2大エアラインの路線を利用するのがJOCのしきたり。12時間のフライトを経て着いた欧州の空港で9時間待ち、そこからさらに12時間飛んだ。気温38℃の真夏の熱波もさることながら、「家から37時間くらいかかりました……」という長旅は、地球の大きさを肌で味わうものになった。
一行は1週間足らずの合同視察で、日本大使館や五輪組織委員会から、現地状況や会場工事の進捗を確認した。選手村やトレーニング施設を視察したほか、「べニュー・ツアー」ではグループに分かれて、いくつかの各会場を見て回った。
山中氏にとって、ゴルフ会場の視察は今回の最大の任務といってよかった。なにせゴルフは、対戦選手はもとより、まずはコースが立ち向かうべき最初の敵になるからである。