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リオ五輪の新設ゴルフコースに潜入。
勝負を左右する“風”と周辺環境。 

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桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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photograph byAP/AFLO

posted2016/01/31 10:50

リオ五輪の新設ゴルフコースに潜入。勝負を左右する“風”と周辺環境。<Number Web> photograph by AP/AFLO

2015年10月に撮影された造成中のレセルバ・マラペンディGC。南は池とルーシオ・コスタ通りを挟んで大西洋に面している。

強盗に襲われたら抵抗はせず、まず持ち物を……。

 注意事項はそれにとどまらない。リオには同国の他都市同様、ファヴェーラというスラムが点在する。高額で流通されるスマートフォンは盗難の対象で、“歩きスマホ”なんてもってのほか。タクシーは車内に運転手の身分証明がされている車を利用すること。強盗に襲われたら抵抗はせず、まず持ち物をすべて出せば命だけは……といったものにも及んだそうだ。用心を心がけるよう、多少大げさな表現もあったかもしれないが、トップゴルファーが主戦場とするアメリカや西ヨーロッパ、もちろん日本とも環境が明らかに違う。

 ゴルフの日本選手団は丸山ヘッドコーチ、選手、チームマネージャーの山中氏。そして「選手と一心同体」という理由から、それぞれのキャディもその一員。しかし普段行動を共にするトレーナーや、クラブを調整する用具メーカーのスタッフのパスは限定的になる。

 JOCが各競技の選手に負担する航空券はエコノミー席のもの。世界のトップゴルファーはファーストクラス、ビジネスクラスで移動するのがもはや当たり前。

 選手村の宿舎は4人で1部屋を使う仕様。学生時代ならともかく、団体生活を苦にしないトッププロがどれほどいるか。ゴルフのオリンピック強化委員会では別の宿泊先を既に押さえてはいるが、情報入手を優先させるなら選手村を利用するのが一番いい……。

 要するにリオでは、ゴルファーにとってコース外において不慣れな点が多いのである。

「ゴルフはやはり特殊なんだ」

 山中氏は今回の合同視察について「『ゴルフはやはり特殊なんだ』と思う機会でもありました」と話した。「他の競技は各協会や連盟が選手を強化して、常に双方のやり取りがある。ただ、我々JGAは選手を抱えているわけではなく、出場するのは普段ツアーで戦うプロ。視察の中でも、彼ら(他競技の団体)が知りたいことについて僕らには関係がなかったり、僕らが聞きたいことが彼らには興味がなかったり……。正直なところ、そういう違和感はありました」。冒頭のVIPとの距離を感じたのは、ゴルファーがオリンピックの“新参者”だから、というだけではなかった。

 メダル争いが、いつもの戦いとは“別物”という性格は、ほとんどの選手が初めてプレーする新設コースよりも、その外での方が色濃いかもしれない。対応力が試されるのは、大西洋めがけて突き進む風だけ、とは言いがたい。それでもだ。いまも昔も、世界を圧倒する真のトッププレーヤーは「それもプロゴルフの一部」と、容易く理解できる選手たちでもある。

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