ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
リオ五輪の新設ゴルフコースに潜入。
勝負を左右する“風”と周辺環境。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byAP/AFLO
posted2016/01/31 10:50
2015年10月に撮影された造成中のレセルバ・マラペンディGC。南は池とルーシオ・コスタ通りを挟んで大西洋に面している。
公式なお披露目の前に潜入できる“勝算”。
気鋭の米国人コース設計家、ギル・ハンスが手がけた18ホール、レセルバ・マラペンディGCは、五輪開催が決定してから着工された新設クラブ。年の終わりにようやく芝が根付き始め、ゴルフ場らしくなってきたところだった。
公式のお披露目は今年3月に予定されたプレイベント。その後、各国の選手がプレーできるのは本大会直前、選手村の開村式後になる。視察スケジュール中は、コースに立ち入れない期間だった。
だが、地球の裏側から馳せ参じた山中氏には“勝算”があった。ある関係者を通じ、なんとかして内部に潜入する見込みである。
五輪を終えてから10年間はパブリックコースとして運営される同クラブは、地元の富豪たちによって資金が捻出されて建設に至った。そのオーナーのひとりは、同国で財を成したイタリア出身のブラジル人。同氏の孫娘の夫が、なんと日本人だったのである。
風が吹くことを想定して作られたコース。
実は2014年に日本協会のスタッフが当地を訪れた際にできた縁だった。彼らオーナーの一族が住んでいるのは、新設コースに隣接する高層マンションの最上階。足を踏み入れずとも、コースの様子はいつでも“空撮”の画でうかがい知れる場所だった。
山中氏は今回の視察前にその日本人に連絡を取り、クラブの門をくぐった。コース内ではギル・ハンス設計事務所の幹部で、当地でグリーンキーパーを務める人物に案内されてカートを走らせ、ホールごとのコンセプトや仕掛けたワナも聞くことができた。一般公開しないという約束で撮影された映像は、既にオリンピック強化委員長の倉本昌弘、ヘッドコーチの丸山茂樹の手に渡っている。
苦労の甲斐あって下調べに成功したコースはというと、勝負を左右しそうなのは上空を抜ける風だという。
クラブの南方は大西洋。ルーシオ・コスタ通りを挟んで大海原が広がっている。男子は7133ヤード、女子は6500ヤードのパー71で行われる予定。数字上では、最近の米ツアーなどからすれば距離は短い部類に入るだろうが「風が吹くことを想定して作っているコースなので」と山中氏。