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マジックではなく、ロジックの勝利。
リオ行き決めたU-23「弱者の兵法」。 

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佐藤俊

佐藤俊Shun Sato

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2016/01/27 11:30

マジックではなく、ロジックの勝利。リオ行き決めたU-23「弱者の兵法」。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

五輪のアジア枠は3。ワールドカップよりも狭い門をくぐりぬけ、日本サッカーの希望の火はつながった。

北朝鮮には、過去に世代別の大会で敗れていた。

 なぜ、日本はこれほど自信を持って戦えたのだろうか。

 チームビルディングは決して順調ではなかった。昨年12月の中東遠征は2試合連続でスコアレスドローに終わり、大会直前の親善試合でも調子が上がらなかった。「大丈夫だろうか」と、決して小さくはない不安を選手たちは抱えていた。だが、北朝鮮戦の勝利で状況は一変した。

 原川力は、言う。

「大会前の試合も良くなかったし、過去にカテゴリー別の大会でも勝ててない。自分たちの力はどうなのかなというところで、北朝鮮から点をとって守って勝てた。内容はともかく初戦に勝ったことで勢いに乗れたし、やれるという自信がついたのが大きかった」

 1つの勝利がチームを変え、流れも変えてしまう。それからは、まさに波に乗る感じだった。1試合1試合、勝っていく度に自分たちの戦い方に自信を持ち、落ち着いて試合運びができるようになった。

主導権を手放し、「弱者の兵法」を選択。

 かつて、2010年の南アフリカW杯で同じ現象を経験したことがある。大会前、チームは守備的なシステムに変更し、選手を入れ替え、「大丈夫だろうか」という不安を抱えて船出した。だが、初戦のカメルーン戦に勝利すると自分たちの戦い方に自信を深め、波に乗った。そうして、ベスト16まで進出した。大会前は「早々に帰国するだろう」と言われていたチームが勝ち進み、結果を出したのだ。

 手倉森監督は、まるでその時の戦い方をなぞっているようだった。大会前、攻撃が機能せず決定力不足が露呈したため、最終予選は「守備力」を高めることに重きを置いた。主導権を握り相手を圧倒するサッカーではなく、しっかり守って失点をせず、1点を奪って勝利するという、いわゆる「弱者の兵法」を選択したのだ。

 その戦い方で北朝鮮に勝った。結果が出たので、戦い方を徹底することができた。徹すれば選手に迷いがなくなり、プレーがより研ぎ澄まされる。戦い方は5試合を通してまったくブレなかった。

【次ページ】 選手の競争と自らの求心力を両立させた手倉森監督。

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