ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
新選手会長に宮里優作が就いた意味。
男子ゴルフ界、逆襲は「現場」から?
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byKyodo News
posted2016/01/15 10:40
スーパースターとして育ったにもかかわらず、宮里優作の人当たりは驚くほどに柔らかいのだ。
「選手と触れ合う機会、時間が大事」
プロスポーツ選手がどうあるべきか。中でもファンとの距離感をどう保つべきか、という議論については様々な考えがあることだろう。露出を制限しながら、素顔をさらさず、なんだか得体の知れないカリスマ性を確立するのも、プロデュース方法のひとつ。
だが宮里は選手たちに、ファンからの親近感を煽るような姿勢の重要性を訴える。
「選手と触れ合う機会、時間が大事。サインでも、ちょっとした会話でもいい。ただロープの外でプレーを観ているだけでは“来た意味”がない。運営スタッフさんの協力も得ながら『また会場に来たい』と思われる現場にしたいというのが一番」
日本の女子ツアーの大きな魅力はイ・ボミに代表されるように、見た目の愛くるしさやコケティッシュさに留まらない、ギャラリー心理を巧みにくすぐる触れ合いのファンサービスにもある。「素晴らしいことで、僕たちも見習うべきことはある。(女子ツアー成功の)根底にあるのは“ゴルフの良さ”を伝えていることだと思う」
選手とファンの距離が近いのもゴルフの特徴。
全力プレーを見せることは当たり前。宮里の言う、興行としての「ゴルフの良さ」とは何だろうか。
アスリートとして、必ずしもずば抜けた体格や身体能力を持っているように見えないプレーヤーたちが、常人離れした技術と思考でスコアメークする面白さ。それもひとつだが、ファンが選手の息遣いが感じられるほど近くでプレーを観戦できるのも、プロゴルフの利点のはず。会場で両者を隔てるのは無機質な巨大スタンドではなく、細いロープに過ぎない。
ゴルフ人口は減少傾向にあるとはいえ、日本に約860万人。「ゴルフを観る人」の大半は「ゴルフをプレーする人」であるのが現状だ。トッププロになれば、アマチュアと触れ合う機会も多くなり、他のスポーツに比べて、プロアマ間での接点や会話の糸口が多い。