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前田健太を獲得した2人の名物GM。
セイバーと保守派をつなぐ男たち。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byAFLO
posted2016/01/13 10:30
前田健太とともに入団会見に臨んだドジャース監督のデーブ・ロバーツ(左)と、編成本部長のアンドリュー・フリードマン(右)。
お金をかけても優勝できずにいたドジャース。
ザイディGMが「マネーボール」の総本山アスレチックスの編成部門に就職したのは、フリードマン編成本部長がレイズGMに就任した2005年だった。方法論が他の金権球団に模倣されて優位性を失っていたアスレチックスが復活し、2014年まで3年連続プレーオフ進出を果たした陰の功労者だった。
2人は2014年、2年連続ナ・リーグ西地区で優勝を果たしたばかりなのに(事実上)更迭されたネッド・コレッティGMの後任としてドジャースに迎え入れられた。経営陣は、高額のFA選手をかき集めてヤンキースを凌ぐ金権球団になりながら、リーグ優勝すらできない現状を打破しようと「コスト・パフォーマンスの向上」を念頭に置いて、2人をヘッド・ハンティングしたのである。
極端な守備シフトや大砲の1番起用を敢行。
レイズ時代のフリードマンのチーム構築法については、今までに様々な人々が検証を試みたが、自身の口が堅いこともあって明らかにはされていない。ただし、フリードマン体制下で唯一の監督だったジョー・マドン(現カブス)は、たとえば去年のキャンプで、レイズ時代の成功についてこう教えてくれたりする。
「まず何よりも過小評価されている選手、チームの勝利に効率的に貢献できる選手を比較的安価で集められたこと。それにレイズで基準として用いたデータのお陰で、我々は試合中の戦術でも、他球団より常に優位にあったと思う」
片側に内野手が3人も揃う極端な守備シフトをしいたり、主砲級の打者を打順1番に抜擢したのは、きちんとしたデータをもとに考え抜かれた戦術だった。だが、たとえばドジャースは急進派のデポデスタGM体制の時、それまで保守派スカウトに仕えていたスカウトやコーチたちの反発があった。レイズ時代のマドン監督は、データ重視の戦術を編成トップのフリードマンから押し付けられて、違和感はなかったのだろうか。
「それはコミュニケーションのひとことに尽きる。彼は人に強い人間でね。微妙な問題でも恐れずに話し合う能力が彼(フリードマン)にはあるんだ」
マドンはそこで片方の眉毛を上げて、微笑んだ。
「彼は一緒に飲みに出かけたって楽しい男だよ。寿司だって好きだし、君だって彼と一緒に出掛ければきっと、楽しい思いをすると思うけどね」