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前田健太を獲得した2人の名物GM。
セイバーと保守派をつなぐ男たち。 

text by

ナガオ勝司

ナガオ勝司Katsushi Nagao

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photograph byAFLO

posted2016/01/13 10:30

前田健太を獲得した2人の名物GM。セイバーと保守派をつなぐ男たち。<Number Web> photograph by AFLO

前田健太とともに入団会見に臨んだドジャース監督のデーブ・ロバーツ(左)と、編成本部長のアンドリュー・フリードマン(右)。

“野球人”フリードマンは保守派とも意気投合。

 映画『マネーボール』には、急進派GMを演じるブラッド・ピットが、保守的な考えに縛られている監督やスカウトと衝突する場面もあるが、それは映画の通り、「球界の革新者である私のやり方に口を挟むな」という態度が、保守派の反感を買うからだ。

 ところがフリードマンは、子供の頃から根っからの野球人である。レイズ時代には、急進派を嫌う急先鋒だった保守派の人間を何人もアドバイザーとして雇い入れ、簡単に折り合いをつけてしまった。

 ひとつの決断をするために「最高の情報を得ること」。そのためには急進派のデータ解析だろうが、保守派のスカウト眼だろうが、何だって生かすべきだという考え。レイズ時代に急進派と保守派の垣根を取っ払ったフリードマン編成本部長は、すでにドジャースでもそれを実践している。

 そんなフリードマンの考えに、ザイディGMも共感しているという。名門マサチューセッツ工科大学やカリフォルニア大学バークレー校で学んだ秀才は、去年の夏、ロサンゼルスの地元紙にこう語っている。

「アスレチックスで学んだことの一つは、未だに誰一人として、このベースボールと言うゲームについて完全には理解していないんだということでした。コーチだろうが、選手育成部門の人間だろうが、データ分析家だろうが、誰一人として他より優位な立場にいないし、絶対的な答えもない。だから結局、共同作業に立ち戻るしかないってことですよ」

前田健太がワールドシリーズの中心に?

 人と人とが作り出す共同作業の中でしか、メジャーリーグの成功は有り得ない。それを支えているのは野球や仕事に対する“情熱”である。フリードマンはかつて、こう言っている。

「偶発的に正しい判断を下すのではなく、いつでもなるべく正しい判断を下すために自分を向上させる。それに情熱を持っていればいるほど、この仕事は信じられないほど難しくなる。ひとつの集団としてチャレンジし続けるには、ある程度の情熱を持っていることが必須条件なんだと思います」

 ドジャースは現在、ナ・リーグ地区3連覇中だが、それはフリードマンの前任者が昨季まで2年連続で選手の年俸総額1位を記録するようになった“負の財産”を抱え込んで達成されたことだ。

 地区連覇など、もはや彼らの目標でも何でもない。ワールドシリーズに勝ってこそ、ドジャースの改革は完成するのである。そして、もしもその中心に前田がいたとすれば、野茂英雄から石井一久、斎藤隆から黒田博樹へと受け継がれてきた同球団の日本人メジャーリーガーの系譜に、今までとは違った輝きを持つ功績が加えられることになる。

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