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レスリング、ボクシング、そして相撲。
増量か減量か、2つの強くなる方法。
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![増田晶文](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/6/3/-/img_63c0172edf1a3eec5d5017836b5eb9301895.jpg)
増田晶文Masafumi Masuda
photograph byAFLO
posted2015/12/28 10:40
![レスリング、ボクシング、そして相撲。増量か減量か、2つの強くなる方法。<Number Web> photograph by AFLO](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/6/5/700/img_65aaf79da3cff72b7a9d6d8ca3f6d423204786.jpg)
スーパーバンタム級の頃のパッキャオ。最終的には、デラホーヤと並ぶ6階級制覇を果たした。
ボディビルダーでも、1年に2~3kgの筋肥大が限界?
しかしながら、筋肉はそうやすやすと増えてくれない。ボディビルの世界ナチュラル大会優勝者にして、脊椎外科医の浅見尚規氏にご教示をいただいた。
「筋肉細胞が増えるのは、いわゆる成長期だけ。成人後は筋肉細胞の増加はあり得ません。ただ、効果的な筋トレによって筋線維とその周囲の組織は肥大します」
筋肉がデカくなったとは、この状態をいう。
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「ボディビルの世界では、年間で2~3kg分の筋肥大があれば上々だとされています」
筋肉を専門案件とするボディビルダーですら、かような実態なのだ。
浜口が階級制度の変更で「動ける筋肉」「技を発揮できる筋肉」という観点から、3kgの筋量アップに苦慮したのは当然のことといえよう。
ボクサーが増量ではなく減量をする理由。
今年も、年末は吉例のごとくプロボクシングの世界戦ラッシュ。7つの世界タイトルマッチがにぎにぎしくとり行われる。
いずれも日本人選手の健闘を祈りたい。
ボクシングもまた、純然たる筋肉をもって激しい打撃戦を繰り広げる格闘技(スーパーヘヴィー級には、かなり脂の乗った選手がいたりするけれど……)。
現役日本人チャンプを見渡せば、軽量級に集中している。いずれの勇者も、こぞって極限近くまで体脂肪をこそげ落としたシェイプだ。腹筋の割れ具合なんぞは、細マッチョ志願者の憧れではなかろうか。
と、ここまで書いたところで、過日たいへん皮肉なことを吠えていた若者(ガリヒョロ体型)のことを思い出した。彼曰く――。
「ボクサーの夢は、究極の拳の王者になることじゃないんスか?」
ふむ、まさにその通り。
「で、体重が重けりゃ重いほど強くなるスよね?」
うん。基本的にはそうなっとるんだ。
「だとしたら、減量して下の階級と戦うっておかしいッスよ。思いっきり増量して重い階級で戦ったほうが強くなれるわけでしょ?」
えっ? そういうことになるの……って、狼狽している場合じゃない。ガリヒョロ君よ、減量つーのは、ボクシングにおける壮絶なロマンじゃないか。
かの力石徹は、命を賭した過酷な減量のすえ矢吹丈と闘った。そこにドラマと感動を覚えんかね?
「あれ、話は真逆だと思うんスよ。矢吹丈が強くなりたいなら、10kg上げて力石と戦えばいいじゃないですか」