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11年ぶりのレスリング復帰戦で優勝。
永田克彦が我が子に見せた父の背中。
posted2015/12/31 12:30
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph by
Yusuke Nakanishi/AFLO SPORT
彼の強さはまだまだ健在だった。
'15年12月22日、東京・代々木競技場第二体育館。
この日行われたレスリング全日本選手権グレコローマン71kg級では、42歳になる永田克彦が11年ぶりに出場し、13年ぶり7度目の優勝を果たした。
42歳での優勝は、'95年に森山泰年が記録した歴代最年長優勝記録(38歳)を20年ぶりに更新するもので、レスリング界のみならず日本のスポーツ界に新しい金字塔を打ち立てた。
「これから新聞の紙面やらネット上の記事なんかを見たらじわじわと来るんでしょうね。森山さんという偉大な方の記録を超えられたのは素直に嬉しいです」
森山が前記録を打ち立てたのは、永田がまだ学生だった20年前。その後、ナショナルチームの監督をしていた森山に永田はお世話になっているため、喜びもひとしおだろう。
総合格闘技での経験をレスリングに生かす。
11年ぶりのレスリング復帰となった今回、不思議と緊張はなかったと永田はいう。
1回戦は'15年の和歌山国体・成年男子グレコローマン71kg級優勝の湯田敬太(拓殖大学)が相手だったが、8-0でいきなりのテクニカルフォール勝ち。2回戦では今大会の第一シードで明治杯(全日本選抜選手権)グレコローマン71kg級2位の近藤雅貴(専修大学)に快勝。ブランクをモノともしない戦いぶりに、観客席が何度となくどよめいた。
シドニー五輪69kg級銀メダリストの力をまざまざと見せつけた形だ。
「緊張はなかったですね。MMA(総合格闘技)で打撃ありの試合をずっとやってきたので、そういう意味ではその経験が良かったんだと思いますよ」
試合後、彼はそんなことを言った。
'05年に永田は、高校から続けてきたレスリングから一時離れて、MMAのリングに上がった。ときには自分よりひと回りもふた回りも体の大きい相手と試合を組まれることもあったが、そうした経験も彼は自分の格闘技人生においてプラスだったと当時のことを振り返る。
「だからあんまり緊張しなくなりましたね。やっぱり打撃有の試合ってめちゃめちゃ緊張するんですよ。実際怖いです。体力的なハードさで言ったら、(これまで自分がやってきた中で)レスリングが一番きついです。でもMMAはまた違ったハードさなんですよ。相手の急所を狙う、痛めつけるわけですからね。体へのダメージとして体力が消耗していくわけじゃないですか」