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歴代“山の神”で紐解く5区の重要性。
アナウンサーの新称号にも期待!?
text by
金哲彦Tetsuhiko Kin
photograph bySports Graphic Number
posted2015/12/27 10:40
前回、1時間16分15秒の驚異的な走りで5区を制した神野は、その後、相次ぐ故障に苦しんだ。箱根最後の年、どんな走りを見せてくれるのか。
社会現象になった柏原、その記録を破った神野。
そして二代目は、東洋大の柏原竜二(富士通)。
2009年に鮮烈なデビューを果たし東洋大を優勝に導いた。その後も走るたびに前人未到の記録を打ち立て、東洋の黄金時代を築いた。
柏原本人に「箱根以降、普通に街を歩けなくなった」といわせるほど、一時は社会現象にまでなった。
三代目の神野選手はまだ一度しか5区を走っていない。
過去の二人は複数回区間賞をとってから“神”として認められるようになった。
しかし神野は、不可能と思われていた柏原の区間記録を破り、初回からその称号をもらった。そして、名前も神野。
原監督は“山の神野”と言ってマスコミを笑わせた。
神野が前回の走りをすれば、青学の優位は揺るがない。
これだけ注目を浴びるようになった山登りの5区だが、箱根駅伝全体で考えると10区間の1つにしか過ぎない。
しかし、昨今の箱根駅伝では、勝敗を分けるとても重要な区間になっている。
その理由はいくつかある。
まず、急激な坂道を登って下るという特殊区間であること。つまり、登りも下りも走れるマルチな走力をもつ選手を必要とする。標高差が800m程度あるため気温の上下もかなり激しく、しさがさらに増す。
そして距離が23.2kmと長く、失敗した時のリスクが非常に高いことも5区の特徴だ。毎年のようにフラフラになる選手が出てきてテレビカメラがそれを追う。
たった1区間で10分近くの大差がつくことも珍しくない。指導者にとっては頭の痛い区間なのだ。
また、5区が往路のアンカーであるということも重要なポイント。
“山の神”がいるチームは、1区から4区までの選手に安心感がある。
「自分の区間で無理をしなくても5区でなんとかしてくれる」という心理だ。逆にライバルチームは、「5区までにできるだけ差を広げたい」という焦りから無理をしてスピードを上げる。勝負での焦りは良い結果をもたらさない。
結果、後半失速してしまい泥沼にはまるのはよくあるパターンだ。
神野が故障から完全復活し再び山登りの5区を走り、かつ、前回並みの記録で区間賞に輝けば、青山が連覇をする可能性は高い。
そのとき、新たな称号がつけられるか否か? 担当アナウンサーのセンスと準備が今から楽しみである。
しかし、仮に神野が5区に起用されなかった場合、他校にもチャンスはある。区間エントリーの発表は12月29日、各校の采配やいかに!