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[渡辺康幸早大前監督の直前予想]
優勝の鍵は“大本命”でないこと。

posted2015/12/24 07:00

 
[渡辺康幸早大前監督の直前予想]優勝の鍵は“大本命”でないこと。<Number Web> photograph by Shigeki Yamatomo

'11年、箱根で総合優勝を決めた際の渡辺康幸。'04年から'15年3月まで早稲田大学駅伝監督を務め、この年は出雲、全日本と合わせて3冠を達成した。

text by

小堀隆司

小堀隆司Takashi Kohori

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photograph by

Shigeki Yamatomo

早稲田に駅伝3冠をもたらした渡辺康幸前監督が、今回の箱根駅伝の優勝候補と見どころを語ってくれました。
Number892号から特別転載します。

 いやあ、早稲田の監督を辞めて、立場が変わると気持ちも変わりますね。大学の監督はこの時期、胃が痛くて大変なんですよ。練習を終えると、必ず誰かが「足が痛い」って言ってくる。お酒がなかったら夜も眠れません(笑)。

 駅伝シーズンが始まる前は青学大の1強という感じでしたけど、11月の全日本大学駅伝を東洋大が制して、少し風向きが変わってきましたね。大本命が青学大であることは間違いないですが、意外に各校の戦力が拮抗している印象を受けます。

 個人的には、駒大にチャンスがあると思います。今大会では大本命と見られていないからこそ「優勝は駒澤」ではないかと。なぜなら、このところの箱根って大本命が勝っていないじゃないですか。優勝候補はあらゆる方面からプレッシャーを受けるので、地に足をつけて調整するのが難しい。僕も実際、3冠を達成した次の年は集中できる環境を作り出すのが大変でした。

 ただし駒大が優勝するには条件があって、それは5区の山上りを馬場(翔大)くんに託すこと。前回の箱根でブレーキした選手ですが、馬場くんはおそらく次も「絶対5区を行かせてくれ」と志願すると思うんです。ブレーキの残像があるので、2年続けてそうなる可能性も高い。だからそこで使うのは怖いし、セオリーとしてはブレーキした区間に同じ選手を使うのはタブーなんですけど、3位以内ではなく優勝を狙うなら行かせるしかないと僕は思います。

青学以外の大学も山で十分に勝負できる。

 というのも、青学大の原監督によれば、12月頭の段階では、神野(大地)くんが万全な状態ではなさそうなんですね。なので、別の選手の準備もしているようです。「山を走らなかったら他の区間では使わない」とも話していたので、青学大が山でしのぐ形にもなりうる。

 神野くんが出場しなければ他9人に掛かる負担が大きくなりますし、仮に出られたとしても今の状態だと1時間19分台がやっとかもしれません。そのタイムなら馬場くんを含め、他大学も山で十分に勝負できます。馬場くんは元々走力があるので、そこでもしリベンジしたらどうなるか。チーム全体に勢いがついて、復路は独走する可能性もある。大八木監督の采配次第ですが、可能性に賭けて欲しいですね。

 青学大、東洋大、駒大、そして万全の状態で臨めれば今回は早大も面白い。強力な留学生の(D・)ニャイロくんがいる山梨学大、成長著しい東海大くらいまでは優勝の可能性があるでしょう。早大は何と言っても前回の箱根経験者が8人残っています。課題は、主将の山本(修平)が抜けた山を誰が上るか。安井(雄一)が上れたら面白いと思うんですが、故障でちょっと出遅れている。エースの高田(康暉)も好調ではないですし。揃ったときは期待ですね。

【次ページ】 山梨学大の序盤に期待、次の3冠候補は“東海大”。

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