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世界で通用する広島の武器は何か?
広州恒大とは対照的だった3位決定戦。
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2015/12/21 11:40
そのスプリント力で決定機を生み出した21歳の浅野拓磨。J優勝に引き続きクラブワールドカップ3位にも貢献した。
茶島に合わせたドウグラスの洞察力。
「誰かがボールをそらすか、誰も触らずにボールが来るだろうと予測して、(ファーサイドの)ポジションを取っていた」
茶島は今シーズン、レギュラーに定着していた選手ではない。だから、このCKも練習によって事前に用意されたプレーではない。それでも背番号9は、ゴールへの道筋を見つけた。高く上がって急激に落ちる茶島のキックの特質と、味方選手すらヘディングで合わせきれていない状況を見極め、ファーサイドでボールが流れてくるのを待ち受けていたというわけだ。
ピッチ内の状況を読み取る洞察力とゴールへの嗅覚を披露したのがドウグラスならば、俊敏性と脚力を世界に見せつけたのが、柏好文と浅野拓磨だ。前者は縦に、中に、切れ味鋭いドリブルで、右サイドを何度も突破。後者は韋駄天ぶりを発揮して相手を置き去りにした。
特に58分から1トップにポジションを移してからは、次々と相手センターバックの背後を突いてビッグチャンスを生み出した。83分には柏が浅野にピンポイントのクロスを届け、浅野のヘディングシュートがクロスバーに当たったところをドウグラスが押し込んで、逆転に成功した。
来年、広島がアジア王者として臨む可能性も十分。
自らのドリブルとスピードがアジア王者にも通用したことは、来季のACLを戦う上でも大きな自信となったはずだ。ところが試合後の2人は、やっぱり“謙虚”だった。
「この大会では、普段のJリーグでは味わえないような相手の守備を体感できた。マゼンベは予想できない間合いで足を出してきたし、リーベルプレートのプレスのはめ方はうまかった。こういう相手との試合はすごく良い経験になったと思う。広島は身体能力で劣っていても、球際での粘り強さや、一歩目の予測で上回ることができる。これからはそのチーム力に加えて、個人として打開する力をもっと伸ばしていきたい」(柏)
「今日は相手もスカウティングしきれていなかっただろうから、僕の特徴をわかっていなかったと思う。だからこそプレーしやすかったし、相手の裏を取ることができた。広島はDFの能力が高いから、普段からレベルの高い選手を相手に練習できる。それが、今大会に活きたと思う」(浅野)
世界と対峙したことで、広島は自身の武器を再認識できたはずだ。これを磨けば、チーム力はさらに増すはず。“謙虚に”見積もっても、来年のこの大会に彼らがアジア王者として臨む可能性は、十分にあると思う。