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長谷川穂積、2ダウンから壮絶勝利。
辰吉丈一郎と重なる傷だらけの姿。 

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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photograph byKYODO

posted2015/12/14 12:00

長谷川穂積、2ダウンから壮絶勝利。辰吉丈一郎と重なる傷だらけの姿。<Number Web> photograph by KYODO

5月には大差の勝利で復帰戦を飾ったが、今回は2度のダウンを奪われる苦しい勝利に。

辰吉丈一郎とも重なる姿。

 ダメージ自体は少なかったこともあり、長谷川は右をフェイントに使いながら左を上下に散らし、ときに仕掛け、ときにフットワークを駆使しながら、少しずつポイントを取り返していった。全体的には優勢ながら、ルイスの強打が長谷川の頭部をかすめるたびに「危ない!」と叫びたくなる。それでも長谷川は3度目の右を被弾することなく、最終10回にはボディブローでルイスを後退させ、気迫の連打で会場を沸かせた。

「ダウン以外は完勝」(控え室の長谷川)という印象ではさすがになかったが、長谷川の判定勝ちに異議はなかった。

 近年の長谷川は傷だらけのイメージだ。試合を観ていると、いつも胸が熱くなる。いや、試合を観る前から、そわそわと落ち着かない気持になる。

 いったん栄光を手にしたボクサーが、それでよしとはせず、殴られ、倒され、鼻血を流し、それでもなお、両の拳を突き出して対戦相手に向かっていく。

 その姿はどこかあの辰吉丈一郎とも重なる。

 網膜はく離による度重なる引退危機、ダニエル・サラゴサ(メキシコ)戦の連敗など、「もう引退するだろう」と周囲が思うような場面が何度もありながら、浪速のジョーは決してファイトすることをやめなかった。

 もう終わったと思われた辰吉が1997年、シリモンコン・ナコントンパークビュー(タイ)との激戦を制して世界王者に返り咲いたときの熱狂、そしてウィラポン・ナコンルアンプロモーション(タイ)戦の2度にわたる壮絶なKO負け――。

 もはや勝つとか負けるとか、技術がどうとかという枠を超え、ファンは辰吉の生き様そのものに声援を送るようになった。

何度も敗北し、何度も蘇ってきたが……。

 長谷川も似ている。

 WBC世界バンタム級王座を10度も防衛したのち、WBO王者フェルナンド・モンティエル(メキシコ)との事実上の王座統一戦にTKO負け。その後、1階級飛び越えての世界2階級制覇という離れ業を演じながら、初防衛戦でジョニー・ゴンサレス(メキシコ)のワンパンチに沈んだ。これで引退かと思いきや、3年のときをへて、IBF世界S・バンタム級王者、キコ・マルチネス(スペイン)に挑戦するも7回TKO負け。

 周囲は当然のように引き際だと予想したが、長谷川は決してグローブを壁に吊るそうとはしなかったのである。

【次ページ】 決して誰も真似のできない生きざま。

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