Jをめぐる冒険BACK NUMBER
福岡にあり、C大阪になかったもの。
J1昇格は「拠りどころ」のある者に。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAFLO
posted2015/12/07 15:00
FC東京、大宮でJ1の戦いを経験してきた中村北斗が福岡昇格の殊勲者となった。来季、再びJ1の舞台でどんな戦いを見せるのか。
代表クラスが揃っても、拠りどころがなければ……。
そんなシーズンでありながら4位に付け、プレーオフ決勝まで勝ち上がって来られたのは、選手一人ひとりのクオリティの高さゆえだろう。
玉田圭司、山口蛍、茂庭照幸と3人のワールドカップ経験者がピッチに立ち、ほかにも橋本英郎、関口訓充、田代有三、キム・ジンヒョン、途中出場の扇原貴宏と、代表キャップ保持者が5人もいた。
福岡に代表キャップ保持者が坂田大輔しかいなかったことと比べると、C大阪の戦力がいかに充実していたかが分かる。
だが、それほどの戦力を抱えながらJ1復帰を逃したという事実に、選手以上にフロントが向き合わなければ、同じミスを何度も繰り返し、しばらくJ2にとどまることにもなりかねない。
クラブの生え抜きである扇原は、危機感を募らせる。
「チーム全体が、去年からずっと自信を失っているように感じる。4連勝が一回しかなかったのは、試合運びやパフォーマンスが安定していなかった証。来シーズン、そこをしっかりと改善していかなければならないと思います」
チームの命運を懸けた大一番で、拠りどころになる経験や自信を持っていた福岡と、持ち得なかったC大阪――。その差が、明と暗を分けることになった。
POでの昇格チームは3年連続1年で降格している。
5年ぶりとなるJ1復帰を決めた福岡だが、すでに視線は来季に向けられている。目指すはJ1定着である。
「すぐ降格するぐらいなら、上がらないほうがいいとすら思っている。しっかりとした土台を築いて、J1に定着することが大事。そういう意味では、ライバルの鳥栖から見習う部分も多少あると思いますね」
そう語ったのは今季、7年ぶりに福岡に復帰した殊勲の中村北斗である。
井原監督もJ1定着に向けた野心を隠せないようだった。
「今のチームでどこまで戦えるのか、期待感を非常に持っていますし、福岡旋風というものを起こせるようにしっかりと準備していきたい」
プレーオフを制したチームはこれまで大分トリニータ、徳島ヴォルティス、モンテディオ山形の3チームとも1年でJ2に逆戻りしている。
“J2で3位のチームはプレーオフで勝てない”というジンクスを覆した福岡が、そのジンクスも破れるかどうか。2016年、井原監督に率いられた福岡がJ1で旋風を巻き起こすことを楽しみに待ちたい。