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アビスパは過去の3位とここが違う!
井原監督と選手の“共通意識”とは。
posted2015/11/30 12:10
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
J2の3位~6位のチームによって争われ、'12年に創設されたJ1昇格プレーオフ。引き分けならリーグ戦上位チームの勝利というアドバンテージがあるにもかかわらず、これまでは6位('12年の大分トリニータ)、4位('13年の徳島ヴォルティス)、6位('14年のモンテディオ山形)のチームが優勝し、3位は1勝も挙げたことがなかった。
この“ジンクス”を、アビスパ福岡が破った。
11月29日のJ1昇格プレーオフ準決勝。コーナーキックからエース、ウェリントンが奪った48分の先制ゴールを守り切り、1-0でV・ファーレン長崎を下した。
「全力を出し切った。悔しいですが、やり残したことはない」
敗軍の将、高木琢也監督はきっぱりと言ったが、それは、ベストに近いパフォーマンスを演じた長崎を退けた福岡の強さを認める言葉でもあっただろう。
スコアこそ1-0だったが、シュート数は12対4、決定機の数は6対2。長崎の巧妙なウェリントン対策も光ったが(前後から挟み、SBもカバーに回る徹底ぶり)、それ以上に輝いたのが、福岡のタイトで隙のない守備、ウェリントンを軸に押し込む力強さ、セットプレーのバリエーション、そして、大舞台でもハツラツとプレーする選手たちの姿だった。
3位は自動昇格を「逃した」印象が強いが。
なぜ福岡は、これまでの3位チームと同じ轍を踏まなかったのか。
4チーム中、最も力があるはずの3位なのに、チャレンジャー――。
その立ち位置、そのスタンスに、福岡の勝因があるかもしれない。
過去3年で3位だったのは、京都サンガ('12、'13年)とジェフユナイテッド千葉('14年)の2チーム。いずれもJ2上位の資金力を誇り、「今年こそ絶対にJ1昇格」を目標に掲げていたチームだった。
シーズン前の狙いは、2位以内でのJ1自動昇格。それゆえ3位でのプレーオフ出場は、どうしても“自動昇格を逃した”という印象が強く、プレーオフでは下位の挑戦を真っ向から受け、プレッシャーもあってか、レギュラーシーズンで見せたサッカーが展開できなかった。
だが、福岡は違った。