ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
男女賞金王を韓国ゴルファーが独占!
「このままでは日本ツアーを……」
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byGetty Images
posted2015/12/03 10:30
イ・ボミのニックネームは“スマイルキャンディ”。日韓両ツアーでの賞金女王経験者は初である。
韓国選手が勝つと、JGTOにはクレームの電話が。
数年来、日本ツアーのトップ選手としての実績を重ねてきたキム。だが、外国人選手の活躍が必ずしも万人に笑顔で受け入れられているわけではない。もちろん自国の選手を応援したいという日本のファン心理は当然である。ただ、特に近年は外的要素から韓国人選手への風当たりが強いのは想像に難くない。
日本ゴルフツアー機構(JGTO)には韓国系の選手が優勝すると、電話等で“クレーム”が数件寄せられるのだという。「協会幹部は日本人選手に勝たせたくないのか」、「野球やサッカーのように外国人枠(出場制限)を導入してはどうか」といった類のものではあるのだが……。
しかしながら、そういった外国人選手の活躍を歓迎できない空気が、顕在化している面も否めない。賞金王戴冠が決まったカシオワールドオープン最終日、地上波で中継されたテレビ放送で、キムの姿が映ったのは35秒ほどだった。わずかに逆転賞金王戴冠の可能性を残していた宮里優作がホールアウトした直後、実況アナウンサーのナレーションだけでキムのタイトル獲得が報じられた。
石川遼が優勝争いを演じたことも、その大きな要因だっただろう。放送の在り方云々を問うつもりはないが、少なくともこれが今もマスを相手にするメディアの嗜好である。
プロアマにも呼ばれず、インタビューも少ない。
そんな現状に焦りを抱いているのは、実は当事者たちに他ならない。日本でキャリアを重ねてきた何人かの選手たちには、ある種の危機感が芽生え始めている。
キム・ヒョンソンやパク・サンヒョンといった30代半ばに差し掛かったプロは、若手選手たちに日本語会話の習得を勧めるようになったという。
「(スポンサーをもてなす試合前の)プロアマ戦にも呼ばれない。ラウンド後のインタビューも滅多に求められない。僕たちは今のままでは、ツアーに必要とされない」
日本の男子ツアーは低迷気味とはいえ、韓国ツアーとは環境も待遇も違う。日本では今年27試合が行われ、賞金総額は34億円超だったのに対し、韓国では12試合の開催で計84億ウォン(約8億4000万円)に過ぎない。この秋も、韓国プロゴルフ協会は会長選で大いに揺れている。彼らにとって日本は、安心して仕事に取り組める出稼ぎの場だ。