ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
男女賞金王を韓国ゴルファーが独占!
「このままでは日本ツアーを……」
posted2015/12/03 10:30
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
Getty Images
2015年の日本ゴルフツアーは、男女で過去に韓国の両ツアーで賞金(女)王に輝いた2人の圧倒的な力が際立った。
女子ではイ・ボミが年間7勝を挙げ、男女を通じて歴代1位の年間獲得賞金となる2億3049万円あまりを記録した。
もちろん、試合にかかる賞金は物価変動に左右されるので、比べる価値のない数字という指摘もある。ただし、これまでの最高額だった2001年の伊澤利光の記録(約2億1793万円)の中には、マスターズをはじめ海外メジャー等で稼いだ賞金も3624万円以上あったこと、イの額はすべて日本で稼いだものであることも忘れてはならないはずだ。
そして男子ではキム・キョンテが2010年以来、5年ぶり2度目のマネーキングとなった。こちらも最終戦を迎えるまでに年間5勝。シーズン後半戦は彼の独走というほかなかった。
偶然とは面白いもので、2人はかつて同じ土地で練習を重ねていたことがある。
ともに韓国北東部の江原道出身。イにとって2歳年上のキムは、自身がナショナルチーム入りする前からの憧れの存在で、「雲の上にいるような人。特にショートゲームは本当に上手くて、いつもスゴイと思っていた」という。
一方でキムの脳裏にも若かりしイの姿は刻まれている。「あの人のスイングは昔から同じ。当時はなぜ国家代表(ナショナルチーム)に入れないか不思議だった」。ちなみに現在、キムの自宅がある京畿道水原には、イの家族が経営するインドアゴルフ施設などが入るビルがある。キムは、イのポスターが張り巡らされているこの建物内の銀行ATMを何度となく利用しているのだとか。なんとも不思議な縁である。
米ツアー参戦を掲げ、調子を崩したキム。
キムが初めて日本ツアーの韓国人賞金王となったのは5年前。この間、勝利なしに終わったシーズンが2度あった。
米ツアー本格参戦を目標に掲げ、これまで多くの選手の前に立ちはだかった壁にぶち当たった。「海外の選手に対抗できる飛距離が欲しい」という密かな思いが、スイングバランスの悪化を招いた。大切にしてきた感性を失い、過ちに気付いて復活するのに要したのが、ここ数年の空白の期間だった。
「ゴルフには悪い時もある。でも悪い時期があったから、また賞金王にもなれた。後輩にも『状態が悪い時間をちゃんと大事にしてやれば、あとで良いことがある』と言うようになった」
昨年結婚し、今年は4月に第一子を授かって迎えたシーズンだった。家族に自身の優勝シーンを見せることが、新しい夢のひとつになった。