ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
男女賞金王を韓国ゴルファーが独占!
「このままでは日本ツアーを……」
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byGetty Images
posted2015/12/03 10:30
イ・ボミのニックネームは“スマイルキャンディ”。日韓両ツアーでの賞金女王経験者は初である。
「このままでは、日本のツアーをつぶしてしまう」
だが、もう甘えてばかりはいられない。ただの賞金稼ぎの場に過ぎない、と捉えるわけにもいかなくなった。「このままでは、僕たちは貢献できないまま、日本のツアーをつぶしてしまう」――。ファンを相手にするプロゴルファーとしての意識がわいた途端、置かれた立場が身に沁みるようになったのである。
「鶏が先か、卵が先か」という話だが、不思議なことに日本でトップに上り詰めた韓国人選手は、ツアーへの絶妙な溶け込み方を見せている。
今年、キム・キョンテが飾った最初の勝利である6月のタイランドオープンはタイ・サイアムで行われた日本とワンアジアツアーとの共同主管競技だった。キムは当地での優勝スピーチを「自分は日本語でやりたい」と申し出て、日本ツアーの一員であることをアジアに向けてアピールした。
11月、米国と日本の両女子ツアーを兼ねたTOTOジャパンクラシックでは、アン・ソンジュが「私は韓国人だけど、日本ツアーの代表選手としてアメリカの選手に負けたくない」とプライドを振りかざして優勝した。日本参戦6年目。もう平仮名、片仮名の読み書きもできる。オフの週には母国に帰らず、新潟県内のゴルフ場で練習に励むことも少なくない。
アンが優勝したその試合の期間中、イ・ボミの耳には純白のパールのピアスが輝いていた。会場は日本有数の真珠の産地である、三重県の伊勢志摩だった。「(関係者から)もらったんです。(真珠が)名産と聞いて、これに決めました」という、さりげない演出だった。
自分たちが所属するツアーの価値を高めるために。
言うまでもなく、外国語能力やコミュニケーションの力はゴルフのスコアに直接的に影響しない。ただ、賞金王、賞金女王になるような韓国人プレーヤーは、通訳なしでも懸命に日本語を操り、積極的に日本に寄り添おうとしているというのも、見過ごすことのできない事実である。
海賊のような荒々しい「強さ」だけではない、ツアーにとってのコンテンツのひとつになろうとする努力が垣間見える。むしろ、彼ら、彼女らのそんな立ち振る舞いの多才ぶりと謙虚さに、紛れもない「強さ」が透けて見えるのだ。
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