今日も世界は走っているBACK NUMBER
都市型フルマラソン増加の陰で――。
規模や人気よりも大切な事を考える。
text by
金哲彦Tetsuhiko Kin
photograph bySports Graphic Number
posted2015/11/14 10:30
ランブームを生み出した東京マラソンは来年10回目を迎え、ますます人気に拍車がかかっている。
新レースは、既存レースの“いいとこどり”に。
東京マラソンの翌年2008年にスタートした「とくしまマラソン」の開催理由の一つは、糖尿病ワーストワン県の汚名返上である。車社会の生活でかつ食べ物がすこぶるうまい。そんな徳島県民に運動の機会を与えるには絶好のイベントだった。
糖尿病改善など、具体的な統計数値の成果がでるまでには、さらに時間がかかるだろう。しかし、「とくしまマラソン」がきっかけで走る人が増えたことは事実だ。
さらに、最近できた大会の運営や企画の中身がよく似ている現象も気になる。
首長などから大会が起案されてからレースの実施に至るまでには数年の歳月を要する。その間、担当者たちは既存の人気レースを視察し徹底的に研究してくる。人気大会の“いいとこ取り”をするのは当然のことだろう。
医療支援体制の充実、完走メダルや参加賞のアイデア、ペースランナーの配置、沿道の応援パフォーマンス、ずらり並んだ子供たちのハイタッチなどは、新設大会の多くで見かける。
参加者が喜ぶツボを押さえることで人気が高まるのである。
大会主催者が気にする「データ」とは?
さて、RBS社が運営するポータルサイト「ランネット」上で大会主催者が気にするデータがある。参加したランナーからのレース評価だ。
このデータ、参加するランナーにとっては初めてエントリーする大会の選択には必見であり、大会主催者にとっては重要な参考データとなる。
以下は、その評価基準だ。
・事前の大会情報、エントリーの容易さ、トラブル対応、公式サイトのアップデート。
・会場の案内、導線、荷物預かり、トイレ、スタート前の給水。
・スタートエリア管理、コースの走りやすさ、距離表示、楽しいコース設定、コース情報、沿道の応援、エイドステーションの充実。
・計測ポイント、記録証の発行、年代別表彰、参加賞、大会の雰囲気、エントリーフィーとの見合い、地域色。
まるで『ミシュランガイド』につけられた星の格づけ基準のようにきめ細かい。
ここまでくれば、もはや陸上競技運営の枠組みを超えているのではないかと思えてしまう。開催地にとってみればISO(国際標準化機構)のようなものなのかもしれない。