錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
シーズンを通して戦い続ける難しさ。
錦織圭、ファイナル2年連続出場への道。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byHiromasa Mano
posted2015/10/30 18:25
スイスのバーゼル大会は右肩の痛みで欠場だが、ツアーファイナル出場は“ほぼ”確定の状況。
それでもツアーファイナルほぼ確定の成績。
ただ、それでもツアーファイナル出場ほぼ確定の7位を守っているところに、昨年を上回る勢いだったシーズン前半の足跡がある。シーズン初め、錦織は「ディフェンドしないといけないポイントのことを考えると、メンタル的にプレッシャーがかかる部分は大きい。でもそこを乗り越えればまた強くなれると思う」と話していた。
〈レース〉にディフェンドという要素はなく、その後に錦織は、「今年最後のランキングは今年の成績で決まるので、去年の成績に固執することはない」と考え方を切り替えた(切り替えようとしていた?)が、大会ごとのシード順などに関わる〈ランキング〉は、1年前の同じ週に獲得したポイントが失効して新たに獲得したポイントが加算されるため、失効するポイント分を得なければランキングを落とすというプレッシャーを完全に排除するのは難しい。
そんな中で、2月のメンフィス、4月のバルセロナではタイトルを守り、8月には夏の北米ハードコート・シーズンでの初優勝も果たした。出場が義務づけられているマスターズ1000を昨年は3つ欠場したのに対し、今年の欠場はシンシナティの1大会にとどまった。
シーズンを戦い抜く難しさ。
これは、1年を戦い抜く心身のスタミナ作りをテーマに、苛酷なトレーニングに挑んできたシーズン前半の取り組みの成果であり、成果が及ばなかった〈全米以降〉は来季の伸びしろでもある。昨年全米オープンの決勝で敗れたことも、あとで「勝っていたら充実感がありすぎて、ハングリー精神がなくなっていたかも。負けたからモチベーションを失わなかった」と言うことのできる錦織なら、きっとそうとらえているはずだ。
シーズンを通してトップギアで戦い続ける難しさは、同年代のライバルたちを見てもうかがい知ることができる。去年、錦織とともにツアーファイナル初出場を果たしたマリン・チリッチとミロシュ・ラオニッチはともに今年は出場が叶わなかった。チリッチは昨年末から肩を痛めたためシーズン出足の遅れを取り戻しきれず、序盤良かったラオニッチは全仏オープン前に右足の手術をした影響を引きずった。
その中でただ一人錦織が再びエリート8人の中に名を列ねている。チリッチとラオニッチが抜けたところには、ラファエル・ナダルとフェレールが入ることになりそうだが、昨年のナダルはもともと出場資格がありながら病気療養中の欠場だったし、フェレールは昨年大会中に棄権したラオニッチに代わってラウンドロビンの途中から出場している。