錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
シーズンを通して戦い続ける難しさ。
錦織圭、ファイナル2年連続出場への道。
posted2015/10/30 18:25
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
Hiromasa Mano
今週、錦織圭が出場するはずだったスイスのバーゼル大会は、ベスト8が出揃った状況。“通”の錦織ファンはリシャール・ガスケの動向を気にしているに違いない。ガスケが敗れた瞬間に、錦織とダビド・フェレールの『バークレイズ・ATPワールドツアー・ファイナルズ』(以下ツアーファイナル)出場が決まるからだ。しかしガスケは今のところベスト8に勝ち進んでいる……。
過去1年の累計ポイントで決まる、いわゆる〈世界ランキング〉とは別の、今季の獲得ポイントだけで争う〈レース〉において、錦織とフェレールが7位タイ。
ツアーファイナルまでにこれを抜く可能性があるのはガスケのみだが、今週のバーゼルと来週のパリ・マスターズで優勝し、しかも錦織かフェレールがパリで初戦敗退することが条件となっている。ほとんどありえないシナリオではあるが、可能性がゼロではない以上、錦織のツアーファイナル出場の確定は出ない。
右肩痛でバーゼル大会を欠場した錦織は珍しく1カ月もブログを更新していなかったが、本日パリに向けて出発するという。試合中も周りで起こっていることはほとんど気にならないという錦織だけに、今はガスケのことよりも今季最後のマスターズシリーズに向けて気持ちを高めているところだろう。
昨年と比べると落ちついている今シーズン。
長いシーズンもまさに佳境。しかし、昨年のこの時期の錦織フィーバーの過熱ぶりを思えば、今年はかなり落ち着いている。無理もない。昨年は、全米オープンでのセンセーショナルな決勝進出に始まり、続くアジアサーキットではクアラルンプール、楽天オープンと、錦織にとってキャリア初の2週連続優勝を遂げる破竹の勢いだった。
日本人として初のツアーファイナル出場が見えてくると、スポーツニュースのみならず、ワイドショーや週刊誌もそれがいかに「すごい」ことなのかを、賞金やVIP待遇といったわかりやすい切り口で取り上げたものだ。
今年も出場が決まったらまた騒ぎ出すのかもしれないが、それはさておき、現時点での昨年との熱量の差は数字にも表れている。〈レース〉における錦織の保有ポイントは現在3945。昨年の同じ時期は4265ポイントで大きな差はないが、昨年は全米オープン以降パリ前に1960ポイントを獲得したのに対し、今年は280ポイントにとどまっている。