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大久保嘉人が語る「もったいなさ」。
宇佐美貴史の得点が止まった理由。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2015/10/29 10:30
ボールを持ってからのプレーは超一流。あとは「そこにいる」ために走ることだ。
一度は得点王を諦めかけた大久保嘉人。
「もったいないよな」
そう語ったのは今シーズン、宇佐美と熾烈な得点王争いをしている川崎フロンターレの大久保嘉人である。
「宇佐美がシーズン前半調子良かった時は、すげぇなって思ったし、今年は(得点王は)ムリだなって思った。でもここにきて、なんか元気がない感じが気になる」
ガンバに5-3で勝った試合で大久保は、あるプレーが気になったという。
「宇佐美は個人技があるんで、それで点が取れている時は良かった。でも、同じパターンで続けていれば相手に研究されて、簡単に点が取れなくなる。たぶん、今はだいぶ研究されてチャンスが少なくなっている。でも試合をした時、『もったいないな』と思ったのは、そこじゃない。
俺らの試合の時、DFを2人ぐらい引き付けてボールを取られずにパスを出していたけど、出して終わっていた。そこからゴール前とか、後からペナルティエリアの中に入っていかない。それじゃ全然恐くないし、逆にこっちは良かったと思うよ。宇佐美の課題はそこだろうね」
「宇佐美は出した後、待っていることが多いよね」
そういう意味で、大久保のプレーは参考になる。基本は1トップの大久保だが、下がってきたりサイドでボールを受けることも多い。それでも多くの場合は徹底的にマークされ、どこまでも相手選手が付いてくる。それでも怯まずにボールを受け、前を向いてボールを味方に出す。相手の「(大久保を)離すな」という声も聞こえるらしいが、それを振り切って大久保は相手よりも早くゴール前に入っていく。その時、決定的なチャンスが生まれるのだ。
「出したら必ず中に入る。その時、一瞬のスピードで相手を置き去りにできれば、中でフリーでボールを受けられるんで、得点の確率が非常に高くなる。宇佐美は、パスを出した後、ボールを待っていることが多いよね。でも、実際は出てこない。中に飛び込んでいくには勇気がいるけど、そうして相手と駆け引きして、うまく中に飛び込んでいけばゴールするチャンスが増えるし、もしゴールに繋がらなくても相手DFに警戒させることになる。そういうことを繰り返すとチャンスは必ずやってくる。研究されているからこそメリハリをつけ、駆け引きできれば宇佐美はもっと点が取れる。もともと俺よりも個人技があるわけだから」