フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
急成長した宇野昌磨がシニアGPで2位。
男子フィギュアは空前の混戦模様!?
posted2015/10/28 11:10
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph by
Akiko Tamura
誰がこのような結果を予測しただろう――。
GPシリーズ第1戦目、ウィスコンシン州ミルウォーキーで開催されたスケートアメリカの男子は、予想外の幕開けとなった。
SPが終わった後、トップに立ったのは米国のマックス・アーロン、2位は中国のハン・ヤン、そして3位はロシアのコンスタンチン・メンショフだった。コアなスケートファン以外にとって、「それ誰?」と言いたくなる顔ぶれだ。
3人に共通していたのは、全員が4回転を着氷したこと。特にメンショフは今年32歳と今回の男子12人中最年長ながら、4+3のトウループをきれいに成功させた。これまで大きなタイトルを手にしたことはなかったが、今シーズンに入ってフィンランディア杯で優勝。ロシアには珍しい遅咲きの選手である。
現役選手としては高齢ともいえる年齢なのに、どうやって技術的な上達を可能としているのか、と会見で質問されるとメンショフは「若さを保つ秘薬を飲んでいるわけではありません」と苦笑。「でも自分も観客も退屈しないように、常に新しいことに挑戦し続けていたいと思っているのです」
だがフリーでは、また違った戦いが待っていた。
会場をスタンディングオベーションにした宇野昌磨。
SPでは4回転を転倒し、4位スタートとなった宇野昌磨。フリーの曲は荒川静香がトリノオリンピックで滑った、オペラ『トゥーランドット』の『誰も寝てはならぬ』。10月のジャパンオープンで、高スコアを出して優勝したプログラムである。
出だしの4回転トウループ、3アクセルとジャンプを次々きめ、後半での4回転トウループ+2トウループに成功。リンク全体をまんべんなく使い、ドラマチックなメロディに合わせての鬼気迫る演技は、とてもジュニアから上がってきたばかりとは思えない迫力だった。演技が終わると、ミルウォーキーの会場はスタンディングオベーションとなった。
だがまだ汗を流しながらミックスゾーンに現れた宇野はこう語った。
「素晴らしいと言う演技ではなかった。でも練習であまり調子がよくない中で、あのような演技ができたことはよかったです」
驚いた記者たちが、どこが素晴らしくなかったのかと問い返すとこう答えた。
「良かった点は、転びそうなジャンプでも降りられたこと。悪かったところも、転びそうなジャンプがあったことです。表現の面でも、まだまだできたと思う」
限りなく理想の高い17歳。これからどこまで伸びていくのか、無限の可能性を感じさせる新星だ。