フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
急成長した宇野昌磨がシニアGPで2位。
男子フィギュアは空前の混戦模様!?
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byAkiko Tamura
posted2015/10/28 11:10
左から宇野(17歳)、アーロン(23歳)、ブラウン(20歳)。20歳の羽生も含め、この年代には実力者がズラリ揃っている。
宇野が理想とするスケーターは誰なのか?
昨シーズン、ジュニアの大きなタイトルを全て獲得した宇野は、すでにその才能と可能性を十分に見せていた。だが今シーズンはさらに滑りも体も一回り大きくなり、表現も別な次元に到達したように見える。
「この夏から、バレエのクラスも取るようになった。手の使い方などが下手だったので、指先まで神経が行き届く動きができるように気をつけています」
憧れのスケーターは高橋大輔という宇野。ここで演じたフリー演技は、自分が理想としているものの40%くらいにしかすぎなかった、と言い切った。
「もちろん戦っていく上でジャンプは必要。でも理想とするスケーターはエキジビションでジャンプを跳ばなくても魅せることのできるようなタイプのスケーターなんです」
フリーでは176.65を獲得し、総合257.43。宇野の演技が終了した時点で、プレスルームにはおそらく彼が優勝するだろうという空気が満ちた。だがSPトップ3人の演技が残っていた。
ジャンプをほぼノーミスで決めたマックス・アーロン。
メンショフ、ハン・ヤンともに、ジャンプミスが出て、順位を落とした。
いよいよ最終滑走、マックス・アーロンの番となった。2013年に全米タイトルを手にした彼だが、GPシリーズではアメリカとカナダでそれぞれ銅メダルを1回ずつ手にしたきりだった。
フリー『黒鳥』では、出だしの4サルコウ+2トウループ、3アクセル+2トウループなど、ひとつひとつ着実にジャンプをきめていった。後半での4サルコウも成功させ、最後の2アクセルでバランスを崩した以外は、ほぼノーミスの演技。フリー172.28で総合258.95と、わずかに宇野を上回って初優勝を飾った。
「毎日練習してきたことが結果になって嬉しい。試合に出るたびに5位や6位というのは、楽しくない。もうそろそろ見切りをつけようか、という追いつめられた心境に近づいてきていたところでした」とアーロンは会見で喜びを表現した。
このスケートアメリカでは、過去10年間のうち8大会で日本男子がタイトルを獲得してきていた。開催国の男子がタイトルを手にしたのは、2009年のエヴァン・ライサチェック以来のことである。
米国王者のジェイソン・ブラウンは銅メダル。
3位に入ったのは、全米チャンピオンのジェイソン・ブラウンだった。SPではコンビネーションジャンプの2個目のジャンプをパンクさせて8位という厳しいスタート。だがフリー『ピアノ・レッスン』では、冒頭の4回転で転倒などいくつかミスはあったものの、圧巻の音楽表現を見せて8位から3位に食い込んだ。
SPもそうだが、ブラウンのプログラムは内容が濃く、常に体全体を使って音楽を表現している。腕をだらりと下げたまま脚だけで滑走する部分がほぼ無いという、難易度の高い振付である。ジャンプを跳びやすいようにトランジションが最小限にとどめられているアーロンのプログラムと対照的で、この2人が全米タイトルを競うときにジャッジがどのように点をつけるのか、面白い戦いになるだろう。