松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
松山英樹、開幕戦はいきなり「冒険」。
“いつもの面々”が支える試行錯誤。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph bySonoko Funakoshi
posted2015/10/20 10:30
進藤大典キャディは、東北福祉大ゴルフ部出身で、松山英樹の先輩でもある。
松山と進藤キャディの間で確立した「スタイル」。
だが、松山と進藤キャディのやり取りは、カウフマンとキャディのような洗脳型ではない。たとえば最終日の9番グリーン。松山が何かを尋ねると、進藤キャディは自分のヤーデージ・メモを松山にスッと渡した。そのメモを一目見て納得した様子の松山は、メモを黙って進藤に返し、あらためてラインを読む。そんな一連の作業を2人は絶妙なタイミングで静かにスムーズに行なっていく。
この3日間も、そして最終日も4番、5番、6番とバーディーチャンスを逃し続けてきただけに、進藤キャディの表情は険しさを増し、9番では松山の背中に重なりそうになりながら慎重にラインを読んだ。
進藤の言葉に松山は小さく頷き、3メートルのバーディーパットをついに沈め、2人で小さくグータッチ。それが、松山と進藤キャディの間で確立されているスタイルだ。
層が厚い米ツアーには、さまざまな選手がいて、さまざまなキャディがいる。プレースタイルも、キャディとのコンビネーションも人それぞれ。そんな千変万化の環境下、周囲に惑わされることなく、「我」を保ち、「我がスタイル」を維持することは簡単なようで難しい。そして、その難しい作業を続けていくためには、1人より2人、2人より3人、3人より4人のほうが効率が上がるし、何より頼もしい。
毎晩、食事する店を見つけたり予約したりするのは、マネージャー兼通訳のボブ・ターナー氏の仕事の1つ。
「マツヤマくんは、レストランではゴルフの話はせず、みんなと雑談して笑ってる。思うようなプレーができなかった日でも、食事のときに機嫌が悪かったり落ち込んだ様子を見せたりしたことは一度もないです。彼は気持ちの切り替えが元々上手いけど、この米ツアーでの転戦生活の仕方や快適に過ごす術を、どんどん覚えてきているんだと思います」
首元に張られたテーピングの理由は?
最終日、松山の首元にテーピングが施されていた。強行軍による疲労のせいか? それとも練習のしすぎで痛みでも出ているのか?
飯田光輝トレーナーに尋ねてみると、面白いことを教えてくれた。
「あれは予防のためのテーピングです。ほら人間って、手を当ててあげるだけでホッとして良くなる気がするってことがありますよね。お母さんがお腹をさすると子供の腹痛がなんとなく治まる感じ。“手当て”という言葉は、そこから来ているんです。あのテーピングも、そういう意味のものです」