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レッドブルがまさかのF1撤退危機。
エンジンメーカーを怒らせた“驕り”。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2015/10/18 10:30
2005年から参戦を始めたレッドブル。ルノー・エンジンは9年目で、2010年からはベッテルが4連覇して王国を築き上げたのだが……。
メルセデスにふられ、フェラーリにも……。
レッドブルが最初にパワーユニットの供給を打診したのはメルセデスだった。現在のF1界で最強と言われるメルセデスを、レッドブルが搭載したいと考えるのは当然である。
しかしレッドブルにとっての当然は、最大のライバルであるメルセデス側にとって必然ではない。メルセデス・モータースポーツのトト・ウォルフ(ビジネス部門エグゼクティブディレクター)は、「自分たちのチームのことを考えれば、彼らと契約を結ぶべきではないだろう」と、その判断の理由を語っている。
レッドブルとメルセデスに詳しい、あるドイツ人のレース関係者は両者の関係を次のように説明する。
「もともとレッドブルとメルセデスは反りが合わなかった。オーストリアとドイツという隣国の関係にありながら、レッドブルはメルセデスを相手にしなかったし、メルセデスはレッドブルを無視し続けてきた。それがいまさら手を組むわけがない」
メルセデスに袖にされたレッドブルは、次にフェラーリに助けを求めたが、「時間的にもう間に合わない」と快い回答は得られなかった。
一説には、レッドブルは来年用のパワーユニットではなく、現在使用しているパワーユニットを来年型落ちのパワーユニットとして使用してもいいと譲歩しているという。なぜなら、「レッドブルの車体性能の高さなら、型落ちのパワーユニットでも十分に競争力があるから」だ。
だが、フェラーリ側はそれすら望んでいないという。
現在のF1界に、廉価なエンジンは存在しない。
かつて、F1界に似たようなケースがあった。それは2005年のウイリアムズとBMWである。
不振に陥ったチームはお互いを批判し、ついにシーズン半ばに決裂。BMWはザウバーを買収し、ワークスとして2006年から参戦。BMWを失ったウイリアムズはコスワースという老舗エンジンチューナーが手がける、競争力は低いものの廉価なエンジンを搭載することとなった。
しかし、いまの高度な技術が注ぎ込まれているF1のパワーユニット界には、コスワースのような存在がない。