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WEC第6戦 富士6時間耐久で、
最先端ハイブリッド技術に触れよう! 

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大串信

大串信Makoto Ogushi

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photograph byTOYOTA

posted2015/10/08 11:10

WEC第6戦 富士6時間耐久で、最先端ハイブリッド技術に触れよう!<Number Web> photograph by TOYOTA

WECで年間王者となった名車TSO40HYBRIDの構造図。車体前後のモーター&発電システムとほぼ中央にある蓄電装置。

市販車技術をレースに使ったTOYOTA。

 当然、レーシングカーにとっても熱効率の改善という点でハイブリッドシステムには大きな意味があった。しかし、レースに使うには市販車のハイブリッドシステムは重すぎて実戦への投入が遅れた。だが近年、技術が進化するとともにハイブリッドシステムの導入が進み、それをきっかけにハイブリッドレーシングカーの普及が始まった。国内でもっとも人気を集めるSUPER GTシリーズもハイブリッドレーシングカーが闘う有力カテゴリーのひとつである。

 世界耐久選手権シリーズ(WEC)では2012年、車両規則の改正が行なわれ、ハイブリッドシステムの可能性が拡大した。ここにTOYOTAが投入したTS030HYBRIDは、自然吸気V型8気筒ガソリンエンジン出力が530馬力、モーターによる力行出力は300馬力を誇った。600kgあったシステム重量を6分の1の100kgまで軽量化したハイブリッドシステムTHS-R(TOYOTA HYBRID SYSTEM-RACING)は、走行する自動車の運動エネルギーを制動時にモーター/発電機で回生して蓄電装置に保存し、加速する際にモーター/発電機で再利用してエンジンをアシストするという点で、市販車として広く普及しハイブリッドカーの代名詞となったプリウスの仕組みの延長上に開発されたものであった。

市販車には無い技術を使ったアウディ。

 一方、アウディが投入したR18e-tronは、F1向けに開発されたフライホイール方式のエネルギー回生システムを持つマシンだ。TOYOTAのハイブリッドシステムは、制動時に運動エネルギーを電気エネルギーに変換して蓄電し加速時に再利用するという方式であるのに対し、アウディのハイブリッドシステムは、制動時に弾み車=フライホイールを車輪につないで回転させることで運動エネルギーを運動エネルギーのまま回収保存し、加速時に運動エネルギーを発電機によって電気エネルギーに変換してモーターを駆動、ターボ過給V型6気筒ディーゼルエンジンの駆動をアシストするという市販車ではまだ実用化されたことのない実験的な仕組みだった。

 この2社の争いに、'14年からポルシェがさらに異なるハイブリッドシステムを搭載した919Hybridで参入、ハイブリッド戦は三つ巴となった。

【次ページ】 ポルシェが採用したF1と同じシステムとは?

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