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U-22の“秘密兵器”が遂に登場か。
川崎・中野嘉大がA代表DFを翻弄!
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2015/10/06 10:30
いまだ代表歴はない中野嘉大だが、川崎で風間イズムの薫陶を受け、飛躍的な成長を見せている。
小学校時代から培った風のようなドリブル。
そしてもう一つ、大勢の観客を魅了し、ガンバの右サイドにストレスを与え続けたのがドリブルだ。メッシのようにグイグイいく力強さはないが、掴みどころがないというか、体を立て、細かいステップで風のように相手の間をすり抜けていくのだ。
「昔からドリブル主体のチームで育ってきたので、そのおかげですね」
中野は、そう言って笑った。
ドリブルの源泉は鹿児島にある。小中時代、鹿児島のパルティーダU-12、U-15でプレーした。パルディーダは、パスを出さずにドリブルだけで攻める試合をしたことでメディアに取り上げられたこともある、指導が非常にユニークなクラブだ。そこで個人技術を磨き、独自のドリブルを考え、練習し、自分のモノにしていったのだろう。
佐賀東高校卒業後は、筑波大学に入学。現在の川崎の監督をしている風間八宏がサッカー部の監督をしていた時期だ。「個人技を磨く」という監督の方針の元、中野は個人技、とりわけドリブルを磨いた。風のようなドリブルはプロ入りして習得したテクニックではなく、小学校時代から磨き、積み重ねてきて体にしみ込んだものなのだ。
米倉「今日は完敗です」
ドリブルを武器にした中野のプレーに、今野泰幸は「勢い」を感じたという。
「ドリブルは取れそうで取れない。ステップが細かくて、寄せればサッとかわされるし、行かないと自分の間合いで攻めてくる。しかも自信をもって仕掛けてきているんで、今日は自由にやられましたね」
この日の犠牲者になった米倉も「最初やられたんで注意はしていたんですが、相手にうまくやられた。今日は完敗です」と、舌を巻いた。日本代表のサイドバックを手玉に取り、相手の守備陣に「恐さ」を印象付けたのは、アタッカーとして得点やアシスト同様に非常に大きい。
しかも、中野のスゴさはドリブルだけではない。パスも多彩なのだ。結果的にはオフサイドで得点にはならなかったが、後半に小林悠に出した縦パスは非常に質が高かった。これから試合に出続けて選手との呼吸が合ってくればもっとスルーパスを出せる。そうなれば、ドリブル、シュート、パスと3拍子揃った中野の「恐さ」がさらに増幅されるはずだ。