野球善哉BACK NUMBER
巨人・岡本和真と中村剛也の共通点。
スラッガーが変化球を打つ理由。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/09/29 10:40
高卒1年目の打者が一軍で成績を残すことは非常に難しい。岡本和真は順調な1年目を歩み出したと言えるだろう。
マークされることで訪れた変化。
そうした岡本の能力の背景には、やはり高校時代の経験がある。
高校1年秋にレギュラーをつかんだ岡本だが、脚光を浴びるようになったのは翌年春以降のことだ。1年間で8本塁打だった岡本が、2年生の1年間で48本のアーチを放った。それまで力任せに振るスタイルだったが、下半身を意識したスイングに変えると、結果が出た。そして2年秋の新チームの頃には、奈良県や近畿圏内では誰もが恐れるバッターとなったのだった。
これが、彼にとっての大きなターニングポイントとなった。というのも、対戦チームの誰もが岡本を恐れ、警戒し、勝負を避け始めたのだ。岡本と勝負する相手投手は、ボール球から入り、変化球を多投する。これが当たり前になった。
勝負を避けられ、変化球を多投される。
2年秋の近畿大会準々決勝の龍谷大平安戦では、4打席に立って1打数0安打3四球。龍谷大平安は、翌年のセンバツで優勝するのだが、岡本を“避けなければいけない相手”と徹底的に警戒した。そして、この時の唯一の打席が、岡本にとって非常に重要なものとなった。
それは3四球のあとの4打席目のことだ。それまでの打席とは違い、相手投手がやや勝負の気配を見せながらも3ボール。その4球目を岡本は打ちにいった。球種はスライダー。ややタイミングを狂わされた岡本は、そのボールを打ち損じた。
岡本はのちに、この時のことを「3ボールから、僕に対してはストレートを投げてくるわけないのに、自分はストレートのタイミングで入ってしまった。間違っていた」と回想し、その後は打席での意識を変えたと話している。
「ストレートを打った後の打席の初球が変化球やったり、変化球攻めが多くなってくるので、それを狙える準備はしておかなければいけないと思うようになりました」
つまり、2年生秋にして高校No.1スラッガーとして注目を浴びた岡本には、2つの課題が設定されたというわけだ。
・相手がほとんど勝負を挑んでこない
・変化球攻めが多い
失投であれば、ストレートであるか否かにかかわらずに仕留めること。甘い変化球であれば打ちに行かなければいけない、ということだった。