野球善哉BACK NUMBER
前回大会の反省が活かされず……。
U-18野球W杯優勝に必要なものは?
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKyodo News
posted2015/09/07 12:20
大会3連覇を果たしたアメリカ代表と、負けて観客席に深々と礼をする日本代表。
韓国戦を上野に任せた理由とは。
上野は切れ味の鋭い球筋で勝負する好投手で、この夏の甲子園でも3回戦に進出している。しかし、この試合が大一番であることを考えると、甲子園優勝投手の小笠原慎之介(東海大相模)や今秋のドラフトの目玉ともいわれる高橋純平(県岐阜商)も考えられた。
しかし、仲井コーチたちには、上野の起用に確信があったのだという。
「今大会の韓国は得点力がある。盗塁やエンドランなど、足を使って得点を挙げる能力を持っている強いチームです。しかし、打力はないと判断しました。とにかく、フォアボールを出さない投手。そして、フィールディングがよくてクイックが上手な選手を先発させた方がいいと思いました」
結果、上野は7回を投げて3安打10奪三振の完封勝利。
開幕戦のブラジル戦に続く好投で、大事な一戦の立役者になった。
アメリカと日本の投手起用を比較する。
今大会の日本の投手起用を見ていると、チームスタッフがどの投手を信頼していたかが見てとれた。大会トータルの登板数でも、それは明らかだった。決勝を含めて3試合に先発した佐藤世那(仙台育英)と上野は、西谷監督、仲井コーチらの信頼を集めているというのが分かった。
アメリカとの決勝戦で先発した佐藤は、ファーストラウンドのアメリカ戦(8月29日)、スーパーラウンドのカナダ戦(9月3日)に登板。メジャー予備軍と目される両者を相手に先発を任されるほど信頼度があった。「佐藤は国際大会で通用するピッチャーだということで今回のメンバーに入れました。彼のフォークは二種類あって、そう簡単には打ち崩せないだろうと見ていた」と西谷監督は話している。
とはいえ、信頼するのが佐藤・上野の2人だとするならば、彼らへの比重が偏ってはいなかっただろうか。
例えば、アメリカの投手陣の使い方と比較してみると、その差が顕著に出ている。
大会のMVPを獲得し、決勝戦の先発を任された16歳のニコラス・プラットは、野手兼任の選手だが、決勝に至るまでの試合で1試合しか登板していない。その試合とはファーストラウンドのオーストラリア戦で、8回を投げて勝利投手。投球数は108球だった。
佐藤の決勝戦までのスタッツは、2試合で18イニング、球数は合計271球。上野は13イニング189球を投じている。佐藤は中2日、上野は中1日で決勝戦を迎えている。