野球善哉BACK NUMBER
前回大会の反省が活かされず……。
U-18野球W杯優勝に必要なものは?
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKyodo News
posted2015/09/07 12:20
大会3連覇を果たしたアメリカ代表と、負けて観客席に深々と礼をする日本代表。
アメリカ代表は2週間以上かけて選ばれる。
今回のアメリカ代表は度重なるセレクションを経て、編成されたと聞く。
チームディレクターがMLBのスカウトなどの情報をもとに、108人の選手をセレクト。その108人が1週間の間に40人、次の1週間で28人、最後は3日間の選考合宿を経て……という風にメンバーが決まっていったのだという。
そうした過程を経る中で、技術的な分野だけでなく性格にまで至る細かい選手の特徴、チームが勝利へ向かっていく方向性をも導き出していけた。チームとして戦う一体感が、アメリカからは感じられたのはそのためだろう。
試合中に投手がブルペンに行く際には必ず、補助の投手がついた。ファールボールが当たらないためのフォローだが、その動きは非常に自然で、チームが組織として機能していることをうかがわせた。
また、初戦で先発したオースティン・バーグナーが、初戦の試合後に走りこみをしていた。その理由を尋ねると「試合後はストレッチだけではなくて、走ることによって、血流を良くするためにやっている。これはコーチから助言をもらったんだ」と話していた。より高いレベルの野球をする延長線上に優勝があることを、ちゃんと意識できている言葉だった。
佐藤が一番世界で通用する投手だったが……。
日本は、先述したように「先発投手の起用法」という点においては、2人のコーチと監督のコミュニケーションが取れていたことで結果に繋がったが、それは個々の能力によるものであって、組織としての強みとは決して言えない。
佐藤はファーストラウンドのアメリカ戦、スーパーラウンドのカナダ戦で、ともに1試合を1人で投げ抜いている。球数が100球を超えても降板しなかったが、西谷監督は「佐藤を代えることで流れが変わってしまう、相手を楽にさせてしまう可能性がある」とその続投理由を話していた。
だが、佐藤がこのチームの中でもっとも国際的に通用する球を持っているという評価があるのであれば、彼をいかに大会を通して生かすかを考えていかなければいけなかったのかもしれない。