プロレスのじかんBACK NUMBER
“結果にコミットする”プロレスラー、
M・エルガンが来日の夢を叶えた時。
text by
井上崇宏Takahiro Inoue
photograph byEssei Hara
posted2015/09/01 11:20
初来日にして、「エルガン! エルガン! エルガン!」とG1の試合会場で割れんばかりのコールを巻き起こした。日本のプロレスファンの心を、ひと夏で鷲掴みにした久々の外国人レスラーだ。
アメリカの小さな会場で黙々と四天王プロレスを……。
'90年代の全日本プロレスに熱狂を生んでいた四天王プロレスと呼ばれるスタイル。ハードな打撃に、脳天から垂直に落下させる技、エプロンから場外に高角度で落とす技を、エルガンは小さなインディー団体のリング、200人にも満たない観客の前で黙々とやっていたというのだ。
ほかのレスラー仲間からは「なんであんなにガツガツやる必要があるんだ? バカなんじゃないか」と冷ややかな視線を送られていたらしい。だが、エルガンは「いつか日本で試合したい」とバックステージでKUSHIDAに夢を語っていたという。その夢を叶えるために常に全力でファイトし続けた。
北米のプロレス界では、成功の道がふたつある。
現在、プロレス界における北米のレスラーにとってのサクセスストーリーには大きく2通りのパターンがあるという。ひとつは言わずもがな、世界最大のプロレス団体WWEのリングに上がること。そしてもうひとつは、日本の団体のリングに上がって、リング上のレスリングの内容と実績を残してステータスを得るというものだ。
今年5月、新日本プロレスとアメリカのプロレス団体である「ROH」の合同興行が北米で4大会行なわれた。
その2日目、フィラデルフィアの2300ARENAのリング上で、KUSHIDAは5年ぶりにエルガンと対峙した。
5年前にはあったエルガンの髪の毛が残り少なくなっていた。キャリアはすでに10年以上になっている。
ひょっとしたら、ここで新日本の関係者にアピールできなかったら、もう日本行きの夢を叶えることはできないかもしれなかった。
余談だが、ROHにはヘビー級、ジュニアヘビー級といったような階級分けの概念がない。体格差、体重差関係なく、いい選手同士を闘わせる。だから、KUSHIDA対エルガン戦も実現した。強いほうが勝つ。激闘の末、エルガンがエルガンボムでKUSHIDAを破った。