ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
マスターズの数倍を集める大会も!?
箱根で考える、地元と大会の関係性。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/08/30 10:30
今年のCATオープンで優勝した服部真夕。優勝は3年ぶりの5度目。箱根の町は、彼女にとっても忘れられない場所になったはずだ。
箱根駅伝にフットサルと、興行に町ぐるみで協力。
人口約1万3000人の町はスポーツ興行に積極的で、大学駅伝のほか、最近ではフットサルへの支援も行っている。
箱根でのCATレディース開催は、今年で18回目(大会自体は19回目。第2回大会の時に静岡県・三島市から当地に移動)。夏の風物詩となった女子ゴルフがスケジュールから消えては、町が負った傷はいっそう深くなる。
運営は5月から日々、気象庁と連携する神奈川の温泉地学研究所と連絡を取り合い、会場への交通網、そして万が一に備えた避難経路の確保を急いだ。
3日間天候にも恵まれ、大会は結局心配した事態は起こらず無事に終了した。今年も優勝者に、地元で作られた寄木細工の副賞トロフィを贈呈できた山口町長。会場を訪れた例年と同等のギャラリー数は、箱根の“無事”をアピールする絶好の機会にもなり「東日本大震災の時もそうでしたが、やはりスポーツの力を感じられる。人々が勇気づけられることがある。選手、大会に本当感謝しています。できる限り、これからも大会に協力していきたい」と胸をなで下ろした。
町のゴルフ団体はかねてから、試合をサポートする他コースからのハウスキャディの連携、中学生のボランティア等の面で大会への協力を惜しまなかった。当地と大会との絆も、一層深まったことだろう。スコアいかんに関わらず、プロがその一打を放つだけで喜んでくれる人々はいるのである。
長く続く大会は、ゴルフ好き「以外」を取り込む。
今回のケースは天災に端を発し、大会が行われる“意義”を改めて感じられた。それにしても、プロのトーナメントには「ゴルフを観る」以上の付加価値が必要だとつくづく思う。
エキサイティングな試合展開やスター選手の活躍は何よりの演出になるが、それらは水物である。プレーヤー依存型の興行は、衰退の速度も激しい。
長く続く大会が持つ特徴として、感じられるのはその土着の文化だ。「お祭り騒ぎ」という言葉があるが、ギャラリーがよく集まるトーナメントには、季節を彩る、まさに“祭り”のような雰囲気がある。法被姿で盆踊りをしたり、夜空に花火が打ちあがったりするわけではないが、開催地の地元住民が、おそらくゴルフという競技にそこまで詳しいわけではない人々も含めて多く会場に足を運ぶ。