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マスターズの数倍を集める大会も!?
箱根で考える、地元と大会の関係性。

posted2015/08/30 10:30

 
マスターズの数倍を集める大会も!?箱根で考える、地元と大会の関係性。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

今年のCATオープンで優勝した服部真夕。優勝は3年ぶりの5度目。箱根の町は、彼女にとっても忘れられない場所になったはずだ。

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桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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NIKKAN SPORTS

 40代半ばで始めたゴルフだが、今年の4月からクラブを握っていない。重なる心労からか「少し痩せた」と心配する関係者も少なくない。

 神奈川県・箱根町の山口昇士(のぶお)町長にとって、2015年の春夏は実に長い。

 4月末、気象庁は箱根山の大涌谷付近における火山性地震の増加を発表した。噴火警戒レベルが活火山の通常レベルである1から2へ、そして3へと引き上げられた6月末。わずか数十日の間に、町は様変わりした。年間2000万人が訪れる日本有数の観光地は、一連の影響で客の足並み、売上げが例年の6割弱に落ち込んでいるという。

 服部真夕が3年ぶりのツアー優勝を遂げたCATレディースは、そんな夏の箱根で行われていた。

 入山規制が敷かれ、火口から半径約1キロ以内はいまも立ち入りが禁止されている(24日に一部規制を解除)。

 しかし、普段から自然の脅威と隣り合わせで生活する箱根町の住民にしてみれば、今回の広い範囲での温泉街への影響は、ある意味で想定の範疇を超えていたという。確かに、大涌谷にある温泉の湯を出すための機械設備の点検ができず、火口に近い地域には、温泉ではなく薬草風呂にして利用客をもてなしたり、日によって温かいお湯が出なかったりする宿泊施設もある。

火口から数キロ離れれば、源泉が違うので影響はない。

 ところが山道を数キロおりれば、多くの施設の営業状態は何ら変わりがない。そもそも火口付近とは、源泉が異なるからである。

「箱根の“すべて”が機能不全である」と受け取られがちなのが、町が抱える風評被害のひとつだという。「報道による反響が大きく、悪影響が町全体に波及してしまったことで、住民の生活が一変した」と山口町長は嘆く。状況はなかなか好転しない。

 今回のCATレディースの運営サイドも、安穏とできるわけがなかった。

 会場の大箱根CCは、大涌谷から3.1キロの場所にある。コースから斜め上に目をやれば、火口からゆらりと立ち上る白い煙が確認できる。日本女子プロゴルフ協会(LPGA)の小林浩美会長からは町長宛てに、大会の開催可否を心配する手紙が2度届いた。

 もちろん、最悪のケースが起こってからでは遅い。ただ、限りなくその可能性は低いと判断した上で、箱根町は「最大限の情報提供をする。今年もぜひ試合を開催してほしい」と訴え続けた。

【次ページ】 箱根駅伝にフットサルと、興行に町ぐるみで協力。

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