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“夏場になれば強い”は幻想だった。
連続入賞逃した日本マラソンの現実。 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byAFLO

posted2015/08/23 13:30

“夏場になれば強い”は幻想だった。連続入賞逃した日本マラソンの現実。<Number Web> photograph by AFLO

2時間21分6秒で21位の藤原正和。20キロ付近で先頭集団から脱落し、レース後「頭がボーっとして」と語った。優勝したのはフルマラソン経験3度目の19歳、エリトリアのギルメイ・ゲブレスラシエ。

「日本人は暑さに強い」という評判。

 レースを前に、「暑くなればチャンスが出てくる」と語る関係者もいた。これまでも「日本人は暑さに強い」としばしば言われてきた。

 だが、現実はそうならなかった。

 実際には藤原と前田の2人は、決して暑さに強い選手ではない。これまでの夏場のマラソンでの2人の走りからすれば、そう考えざるを得ない。

 それを自覚するからこそ、藤原、前田ともに対策も練ってきた。その上での成績だ。

 だから検証すべきポイントは、2つ浮かび上がる。

暑さをチャンスにできる選手もいる。

 1つは、夏の試合への選考のあり方だ。日本の選手だって当然、対応力に個人差がある。暑さをチャンスとしてきた選手もいる。

 例えば、2012年のロンドン五輪で6位入賞、2013年のモスクワ世界選手権でも5位入賞を果たした中本健太郎は対応力の高い選手の1人と言える。

 中本は、ロンドン五輪代表選出時は、3枠あるうちの3番目の評価であったが、大会では日本勢唯一の入賞と結果を残した。そこにも選考の難しさが表れている。日本人だから暑くなればチャンスがあると考えるのは、あまりに漠然としている。

 夏場と冬とで様相が異なるのは間違いないところだ。今回の世界選手権では、昨年2時間2分57秒の驚異的な世界記録を出したデニス・キプルト・キメット(ケニア)ら有力選手が上位に入れず、自己ベストは2時間7分47秒という19歳のギルメイ・ゲブレスラシエ(エリトリア)が優勝したのも、高温多湿のコンディションが影響しているだろう。なおさら、どのように選考するかは重要となる。

 もう1つは、暑さへどう対応するかを考え直すことだ。藤原と前田がどう取り組んだのかをあらためて捉え、そこで得られた反省材料は今後にいかすことができる。2人は真剣にトレーニングに励んできたはずだ。それが結果につながらなかった以上、何かしらの問題点はあったと考えられる。逆に言えば、これまでに成功した選手の取り組みも検証する意味はある。

【次ページ】 13年間日本記録が停滞している現状を打開するために。

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