松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
松山英樹、英語を公の場でお披露目?
咄嗟にでた「Fore, Right」の一言。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph bySonoko Funakoshi
posted2015/08/06 16:30
サインを待つ子供たちに自ら歩み寄り、最近は言葉を交わすことも増えてきたという松山英樹。身につけた英語力は彼のゴルフ、そして人生をより豊かなものにしていくことだろう。
他選手と交流しなければ、技術の知識も増えない。
松山の用具を担当するクリーブランドゴルフ/スリクソンのツアーレップ、藤本哲朗氏いわく、「ラヒリのアイアンショットの高い弾道を、松山選手は結構気にして見ている様子でした。ここはグリーンがすごく固いので、高い球で上から落として止める参考にしていたんじゃないかと思います」。
逆に、松山が参考にされることももちろんある。
「松山選手が使っている練習用のアイアンをラヒリがどこかで見たらしく、自分も欲しいと言ってきたので、同じようなものを作って渡しました」(藤本氏)
世界の舞台で競い合う猛者たちも、そんなふうに持ちつ持たれつの面がある。だが、「持つ」にも「持たれる」にも、他選手と交流し、意志疎通を図らなければ成立しない。
米ツアー挑戦を始めたころの松山は、試合会場では自分の世界だけがすべてだった。だが、わずか2年の間に彼の世界は驚くほど広がりつつある。
調子との向きあい方が「まだ、よくわからない」。
メジャー優勝を目指す松山にとって、今季の残るチャンスは来週の全米プロのみになった。日本のファンも「そろそろ」と期待を寄せている。そして、一番そう思っているのは松山自身であろう。
しかし、特定の試合に照準を合わせて調子を上げていくために、果たしてどうしたらいいのか。松山にとって、その方法はいまなおわからないシロモノなのだと言う。
「(調子を)上げようと思って上げられればいいんだけど……。向き合い方が、まだ、よくわからない」
まだ、わからない――。けれど、米ツアーに挑み始めた2年前を振り返れば、あのころは、一体どれほどのことがわからなかったことか。そう、1から10まで何もかもがわからず、1つずつ体験しては覚え、失敗しては覚え、ときには傷つきながら突進してきた。
英語の上達ひとつ取っても、彼の着実な歩みが見て取れる。最初のころは「周りが何を言ってるか、なーんもわからないから、なーんも気にならない」と言っていた松山だが、最近は練習中も試合中も、他選手たちとずいぶん英語で話をするようになっている。だからこの日、ラヒリは「格段に上達している」と松山の英語に目を見張っていたのだ。