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山口蛍が“らしさ”を取り戻すために。
J2に慣れず、モノ言うリーダーへ!
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2015/07/28 10:50
今季のJ2は大宮が独走しているが、2位のジュビロと3位のセレッソの勝ち点差は現在3。毎年プレーオフでは激しい戦いが繰り広げられており、自動昇格の2位がやはり焦点になる。
J2のサッカーと、J1や代表のサッカーは違う。
山口は昨年夏以降、ケガで試合に出場できなかった。今シーズンから復帰したが、連戦や夏の暑さで疲労感が増しているのもあるだろう。
だが、何より恐いのはJ2というステージへの慣れではないだろうか。かつてガンバ大阪がJ2のステージで戦っていた時、遠藤保仁や今野泰幸は日本代表で世界と対戦した後、クラブに戻るとJ2とのギャップに苦しんだことがあった。
J2の「頑張るサッカー」は決して甘くはないが、代表で経験するサッカーとは別モノだ。山口もロシアW杯予選のシンガポール戦後、クラブに戻り、改めて自分のプレーを維持する難しさに直面している。
「自分も今J2でプレーしてみて、代表やJ1とのスピードとかプレーの質とかで違いを感じていますし、そこで自分のプレーを維持するのは難しいなって感じています。試合だけじゃなく練習でも感じるけど、一方で自分の意識の問題でもあると思う。ストレスは感じないけど、もっと意識を高くもってやっていかないといけない」
選手は、どうしてもプレーする環境に染まってしまいがちだ。そこに抗って質の高いプレーを続けるのは簡単なことではない。逆に言えば、良い環境に入れば周囲に引っ張られて自分らしさを取り戻す、という可能性もある。
背中で語るスタイルから、物言うリーダーに期待。
幸運なことに山口は、8月に日本代表として東アジアカップを戦う。国内組中心とはいえ、質の高い選手と一緒にプレーすることで自分のプレーに何かしら変化が生じるかもしれない。
しかし本当の問題は、その後だ。
今後も代表の活動はつづくが、長い時間を過ごすクラブでプレーのクオリティを維持できなければ、チームに与える影響が大きくなるのはもちろん、山口自身も自分の本当のプレーを見失ってしまう危険すらある。自ら率先してリーダーシップを発揮していけばいいのだが、山口は「自分から言う必要はないかな。自分が一生懸命にやっているのを見て、ついてきてくれる人がいればいい」と、これまで通り背中で語るスタンスを崩さない。
だが、そろそろモノを言うリーダーになってもいいのではないか。
東アジアカップは、キャップ数の少ない選手が多い中、山口は中心的な存在になる。連覇を目指す戦いの中で、リーダーシップをとるひとりになるだろう。クラブも、夏以降J1昇格に向けてさらに厳しい戦いがつづくことになる。キャプテンの存在感が重要になるのは、まさにこれからだ。悩めるボランチだが、自分の殻を脱皮し、真のリーダーになるべき時が来ているような気がする。