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その決断は「無謀」か「先見の明」か。
eスポーツを支えた“いい大人”達。

posted2015/07/28 08:00

 
その決断は「無謀」か「先見の明」か。eスポーツを支えた“いい大人”達。<Number Web> photograph by SANKO.INC

今では多くのファンが詰めかけ、チケットの争奪戦さえ起こるようになったLJLだが、そこには“大人”たちの尽力の結晶が詰まっている。

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八木葱

八木葱Negi Yagi

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「好きなゲームをしてお金までもらえて、夢のような仕事です」

 これは、『League of Legends』(以下LoL)のとあるプロゲーマーに話を聞いた時の言葉だ。20代前半の彼が口にしたのは、おそらく率直な感情だろう。ゲームでお金がもらえるなんて思いも寄らなかった状況から、たった数年でそれがリスペクトを集める仕事になる。彼らがその「仕事」に意欲を持つのは自然なことだったはずだ。

 しかし、ここで少し立ち止まって考えてみたい。その「プロ」という道はどのように用意されたのだろうか。そこには事業として、イベントとして、組織としてゲームをファンに見せる仕組みを作った人たちがいる。それはプレーヤーたちよりは年上の、いわば「いい大人」たちだったはずだ。

 選手達の中にも大学を休学したり、韓国から来日したり、といった人がいる。しかし大人たちの中にも、社運を賭け、仕事を辞め、住む場所を変えた人々がいる。

「eスポーツは根付かない」といわれた日本で、彼らはなぜプロ組織の創立に奔走し、何と戦い、そして何を目指したのだろう。

「選手にプロ意識を持ってもらうのが一番大変だった」

 LoLの日本最高峰リーグ、『LEAGUE OF LEGENDS JAPAN LEAGUE』(以下LJL)を主催するSANKOの鈴木文雄社長(44)は、こう話してくれた。

「eスポーツをプロ組織にしようという試みは何度もありました。でもそのほとんどが続かなかったのは『何故それをやるか』という部分が決定的に足りなかったんだと思います。

 苦労したことはたくさんありますが、やっぱり一番は選手にプロとしての意識を持ってもらうのが大変でした。eスポーツを始めた頃は本当に酷くて、遅刻、運営批判、他の選手のバッシング、何でもあり。それに耐えかねて辞めてしまった社員もいますし、『なんでこんなわがままな子供のために一生懸命やらなきゃいけないのか』って泣いたスタッフもいます。

 でもトラブルが起こるたびに、日本にeスポーツシーンを作るために、毅然として秩序を守ろうと対話を続けてきました。だから今は、スタッフも選手も本当にプロらしくなってきたと思います。

 もちろん選手達の意識にも仕方ない部分はあって、プロだ、eスポーツだ、と言われても選手自身がまだそこに現実味を感じられていなかったんだと思います。彼らが自然にeスポーツをプロ競技だと思い、この場所をリスペクトできるような環境を作りたいですね。

 そして仕事でもありますから、今年こそは黒字にしたいとも思っています。スポンサー企業の方々にも『志』以上の何かをお返ししないといけませんしね」

【次ページ】 「ゲームが上手い」ことを職業能力と考える企業も。

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