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なぜレアルは英雄を“追放”したか。
ペレスとカシージャスの「十年戦争」。
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byGetty Images
posted2015/07/23 11:00
イケル・カシージャスの胸にレアル・マドリーのものではないロゴが飾られていることにまだ多くのファンが慣れずにいる。GKとしてはいまだ一流なだけに、活躍を期待したい。
モウリーニョの態度も任期途中で一変。
しかし会長がカルデロンに代わるとカシージャスは好待遇を受け、前述の新契約を早々に提示された。
一方で、後に縁を切った代理人がこのときの手数料(約500万ユーロ/現在のレートで約6億7000万円)を要求してきたため、カシージャス家はマドリーを訴えることになった。通例に従い、クラブが支払うべきと考えたからだ。
これが'09年6月会長の座に返り咲いたペレスの癇に障った。国民を狂喜させた翌年のW杯優勝も同様だ。
「ペレスは私たちの息子の活躍を望んでいなかった。その憎き相手(カシージャス)がスペインにW杯をもたらしたなんて彼にとっては最悪だったはず」
'10-'11シーズンからチームを率いたモウリーニョはマドリーにおけるカシージャスの地位を決定的に失墜させた1人だが、それもペレスの意向だったと両親は信じている。
「1年目のモウリーニョはことある毎に『世界一のGK』と息子を褒め称えていた。態度が一変したのは我々が訴訟の取り下げを拒み、会長が激怒してからだ」
近年のサンティアゴ・ベルナベウで鳴り響いたカシージャスに対する非難の指笛もペレスの仕掛けだったという。
「息子を貶めるキャンペーンを、ペレスは特定のジャーナリストやメディアの力を借りて2010年から続けてきた。指笛を吹く者がいたら大々的に取り上げさせ、『カシージャスはファンに愛されていない』ということにできる。そうすれば指笛はさらに大きくなるだろ」
法廷でも明らかになったペレスのメディア操作。
ペレスの日常的なメディア操作はしばらく前から公然の秘密となっていたが、数カ月前、法廷でも証言されている。
マドリー情報に特化したポータルサイトを立ち上げた人物が大規模な汚職事件の容疑者として出廷した際、30万ユーロ(約4000万円)の支払いを受けたマドリーとの関係を問われ、「フロレンティーノから電話をもらい、『ベイルがひどいことを言われている。なんとかしろ』と指示された」ことを明らかにしたのだ。
ペレスは否定した。が、続いて同サイトの編集長も「我々のクライアントであるマドリー」に「ある新聞がベイルを叩くキャンペーンを行っている。それを潰すぞ」、「マドリーに害をなすレフェリーのジャッジがあった。少々力を使って叩くぞ」と言われたことを証言している。