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なぜレアルは英雄を“追放”したか。
ペレスとカシージャスの「十年戦争」。
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byGetty Images
posted2015/07/23 11:00
イケル・カシージャスの胸にレアル・マドリーのものではないロゴが飾られていることにまだ多くのファンが慣れずにいる。GKとしてはいまだ一流なだけに、活躍を期待したい。
「息子が強いクラブへ行くことをペレスは望んでいない」
こうして精神的に消耗したカシージャスは、クラブに対する訴えを取り下げた。が、状況は変わらず、モウリーニョにレギュラーポジションを奪われ、メディアやファンから精神的圧力をかけられ、カシージャスはますます疲弊していった。
そして限界に達したのだろう。去る6月、代表のある選手は旧知のジャーナリストに危機的状況を知らせている。
「イケルがやばい。フロリート(ペレス)がすぐにも追い出したがっている。今回は真剣だ」
カシージャスは、残された唯一の道=退団を選ばざるを得なかったということだ。
ところで不思議なのは、移籍を決めたカシージャスへのオファーがポルトからしか届かなかったこと。彼ほどの選手なら、獲得を望むクラブは他にもありそうなものだが。
「マドリーがそう言ってるだけ。彼らにとって都合の悪いものは握りつぶされる。息子が強いクラブへ行くことをペレスは望んでいないんだ。昨季のモラタや'03-'04シーズンのモリエンテスのように、CLでの直接対決で活躍されると困るからね」
お別れセレモニーでは、ペレスのやり方を非難するコールも起きていた。
カシージャスに感謝し、変わらぬ愛情を注ぐファンもたくさんいるのだ。