マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
大阪桐蔭と履正社、“決戦”の裏側。
「大阪の頂点にはペガサスがいる」
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/07/21 16:30
「高校球界で最もプロに近い学校」である大阪桐蔭。激戦区大阪で3年連続夏の甲子園出場は伊達ではない。
試合前には大阪桐蔭の先発が心配されたが……。
大方の見方は、岡田・履正社の先発は2年生左腕・寺島成輝。私も同感であった。春からの安定した投げっぷり。速球は140キロ台中盤に達し、スライダー、フォークとの緩急にコントロールの乱れがないのが頼もしい。
後ろに3年生の腕利きが2人控えて、飛ばせるところまで飛ばせる。2年生左腕が楽に投げられる環境を作ってあげられる。
一方の西谷・桐蔭が難しい。
春は、やはり成長著しい2年生左腕・高山優希の台頭が輝いて見えていたが、エース・田中誠也だって、したたかな実戦力を持った優秀なサウスポーである。しかし、2回途中で10点を奪われて敦賀気比に粉砕されたセンバツの“後遺症”は残っていないのか。岡田・履正社が敦賀気比の「田中粉砕戦法」を研究していないわけがない。
ならば、やはり伸び盛りの高山投手の勢いに賭けるのか……と、そんな予想を持って試合の日を待っていた。
終わってみれば5-1。大阪桐蔭が理想的な攻撃で勝利。
そして……決戦の7月19日。
終わってみれば5-1、大阪桐蔭が履正社を破って3回戦に進むことになった。
先発の予想は、大阪桐蔭の側ではずれた。
春のセンバツでの炎上トラウマが心配された3年生左腕・田中誠也が、そんなものどこへやら、持ち前のしたたかな実戦力を100%発揮して、履正社を最少得点に抑えて完投勝利を手中におさめた。
攻めては3回に履正社内野陣の失策で2点を奪って逆転。7回にはスクイズで1点、9回には投手・田中誠也の左翼線二塁打で2点を追加した大阪桐蔭の攻撃は、「先制・中押し・ダメ押し」と理想的な展開に見えた。
敗れた履正社だって、大阪桐蔭と同じ7本のヒットを打っている。内容にはスコアほどの開きがなかったはずのこの試合に、4点差という違いが出てしまった理由は、走者を許してからの辛抱強さだったのではないか。