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『グラップラー刃牙』と山本“KID”。
見逃せない世紀の異種格闘技対談!
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byTadashi Shirasawa
posted2015/07/06 17:30
板垣恵介氏はKIDと会って「初めて人を見下ろしながら恐怖心を感じた」という。
長年かけて丁寧に彫り込んできたタトゥーが、ほぼ両腕を埋め尽くしている。「今が人生で最長」のヒゲをたっぷりとたくわえ、口の上下の歯は「オシャレ」ですべて金歯に替えている途中だという。6月中旬、東京・国分寺のマンションの一室。ほんの数分前、その威容で登場しNumber PLUS「スポーツマンガ最強論」取材陣の度肝を抜いた山本“KID”徳郁が、いま「先生」と再会して童心に返ったような眼をしている。
「『刃牙』にはめっちゃ影響された」
「俺らの世代は絶対に読むマンガだったから。板垣先生の『グラップラー刃牙(バキ)』にはめっちゃ影響されたっす。読んで、強くなった気分になって。やっぱこう……ゾワゾワ感? 言葉とかじゃなくて、絵で、内容で飛び込んでくるものがある。やっぱりゾワーってなるじゃないですか。キターって」
'90年代から'00年代中盤にかけて、「誰が本当に一番強いのか」という問いを格闘技ファンならみな胸に宿していた猛々しい季節があった。K-1、修斗、パンクラス、PRIDE、HERO'S……リアルファイト全盛の時代、そのブームの火付け役の一端を、「週刊少年チャンピオン」誌上連載の『グラップラー刃牙』という作品は確実に担っていた。
一方で山本“KID”徳郁もまた、自らを“神の子”と称するなどエッジの立った言動、肉体、ファイトスタイルでブームを大いに過熱した時代の寵児だった。
『グラップラー刃牙』作者の板垣恵介氏は、KIDに夢中になった当時を興奮気味に語る。
「KIDの試合を楽しみに生きていける」
「間違いなくニッポンで一番カッコいいチビだった。よく、『三高』っていって背が高いことがカッコよさのひとつの条件だったりするでしょ? そんなの全然関係ない。あまりにも存在が大きくて……。KIDの試合はマッチメイクの時点からゴングまでがずっと楽しみだったね。それを楽しみに生きていけるって感じもあった。試合で『ウオオー!』って声を上げて応援できる、数少ない選手だったよ」
互いに惹かれあう2人の邂逅は必然だった。板垣氏が続ける。
「ハワイで飯を一緒に食ったんだ。あの時、『やあ』って言って握手をして、KIDの肩に触った時の、皮膚の下の密度! 本当に違うんだよ我々と。タイヤみたいだった。生まれて初めて、人を見下ろしながら脅威を感じたというか。恐怖感に近いようなね。目線は俺の下なんだけど、本気出したら引っこ抜かれて10秒くらいでホントに殺されちゃうんじゃないかなっていう(笑)」
「いやあ、マジうれしいっす」と照れ笑いを浮かべつつ、KIDもまた当時を述懐する。